Q&Aでわかる2024税制改正

2024年 青色申告65万円控除の要件:記帳方式と手続き変更点Q&A(フリーランス向け)

Tags: 青色申告, 65万円控除, 記帳, 確定申告, 電子帳簿保存法

2024年の確定申告に向けて、所得税に関する準備を進めているフリーランスの方も多いことでしょう。所得税の計算において大きな節税効果をもたらす青色申告特別控除、特に最大65万円の控除を受けるためには、特定の記帳方法や手続きの要件を満たす必要があります。2024年の税制改正や電子帳簿保存法の変更は、これらの要件にも関連してきます。

この記事では、フリーランスの方が青色申告特別控除の65万円控除を確実に受けるために知っておくべき、記帳方式や関連する手続きの変更点について、Q&A形式で分かりやすく解説します。

Q1:青色申告特別控除にはどのような種類があり、それぞれの要件は何ですか?

A1:青色申告特別控除には、主に以下の3つの区分があります。

フリーランスの方が最大の65万円控除を目指す場合、正規の簿記(複式簿記)による記帳を行い、かつ上記の「優良な電子帳簿の保存」または「e-Taxによる提出」のいずれかを満たす必要があるということになります。

Q2:65万円控除を受けるために必要な「正規の簿記(複式簿記)」とは、単式簿記とどう違うのですか?

A2:正規の簿記とは、一般的に「複式簿記」を指します。単式簿記は、お小遣い帳のように収入や支出を一つずつ記録していく形式です。例えば、「売上 10,000円」のように単純な記録を行います。

一方、複式簿記は、一つの取引を二つの側面(原因と結果、あるいは資産の増減と負債・資本の増減など)から捉え、「借方」と「貸方」という項目に分けて記帳する形式です。例えば、「売上 10,000円、現金で受け取り」という取引は、「現金 10,000円(借方)」と「売上 10,000円(貸方)」のように記録します。

これにより、事業におけるお金の動きだけでなく、資産、負債、資本の増減を記録することができ、最終的に損益計算書(一年間の収益と費用)と貸借対照表(年末時点での財政状態)を作成することが可能になります。税法上、65万円控除の適用には、事業の状況を網羅的に把握できる複式簿記による記帳が求められています。

Q3:2024年の確定申告における「優良な電子帳簿の保存」または「e-Taxによる提出」の要件について詳しく教えてください。

A3:65万円控除を受けるための追加要件は、以下のいずれかです。

  1. 優良な電子帳簿の保存: 税法で定められた「優良な電子帳簿」の要件を満たす形で帳簿の電子保存を行っている場合です。この要件を満たすためには、使用する会計ソフト等が税法上の要件(訂正・削除履歴の記録、検索機能の確保など)に対応している必要があります。この方法を選択した場合、55万円控除の要件(複式簿記、損益計算書・貸借対照表添付、期限内提出)を満たせば65万円控除が適用されます。
  2. e-Taxによる提出: 複式簿記により記帳した内容に基づき作成した確定申告書、損益計算書、貸借対照表などを、提出期限(原則として翌年の3月15日)までにe-Taxを利用して提出する場合です。この方法が、多くのフリーランスにとって65万円控除を受けるためのより一般的な選択肢となっています。マイナンバーカードとICカードリーダー(または対応するスマートフォン)、e-Taxソフトや市販の会計ソフトを利用して手続きを行います。

2024年以降の確定申告においては、電子取引データの保存義務化の猶予措置が終了したこともあり、電子的な方法での書類管理や申告がより重要になっています。e-Taxによる提出は、手続きの簡略化にも繋がり、65万円控除の要件も満たせるため推奨されています。

Q4:電子帳簿保存法の改正(特に電子取引データの保存義務化)は、青色申告の記帳にどのように関連しますか?

A4:2024年1月1日以降、フリーランスを含む全ての事業者は、電子的に受け取った取引情報(請求書データ、領収書データなど)を電子データのまま保存することが原則義務化されました(宥恕措置は2023年末で終了)。

この電子取引データは、日々の事業の取引を示す重要な証拠書類であり、複式簿記による正確な記帳を行う上での根拠となります。例えば、オンラインで購入した物品の領収書データを適切に保存・管理しておくことは、それが経費であることを証明するために不可欠です。

電子帳簿保存法では、保存する電子取引データに「真実性」と「可視性」を確保するための要件が定められています。特に「可視性」の要件では、税務調査などの際にデータを速やかに表示・印刷できること、そして一定の条件下では検索機能を確保することが求められます。

青色申告で複式簿記を行う際、これらの適切に保存・管理された電子取引データを基に記帳を行うことで、帳簿の信頼性が高まります。また、65万円控除の要件である「優良な電子帳簿」を目指す場合、電子帳簿保存法の要件を満たす会計ソフト等を使用し、定められた方法で帳簿自体も電子的に保存することが必要になります。多くのフリーランスはe-Tax提出で65万円控除を目指すことになりますが、いずれにしても、電子取引データの保存は全ての事業者が対応すべき点であり、正確な記帳の基盤となります。

Q5:自分で複式簿記を行うのが難しい場合、他にどのような方法がありますか?

A5:複式簿記は単式簿記に比べて複雑ですが、現在の市販されている会計ソフトの多くは、簡単な入力(日付、内容、金額、勘定科目など)を行うだけで、自動的に複式簿記の形式で帳簿を作成してくれます。これにより、簿記の専門知識がなくても比較的容易に複式簿記を行うことが可能です。

会計ソフトを利用するメリットは、記帳の手間が大幅に削減されるだけでなく、確定申告書の作成や電子申告(e-Tax)への連携もスムーズに行える点にあります。多くのソフトが電子帳簿保存法の要件にも対応しています。

それでも記帳や税務申告に不安がある場合は、税理士に相談することも選択肢の一つです。税理士に記帳代行や税務申告を依頼することで、税務に関する専門的な判断や手続きの正確性を確保できます。ただし、依頼には費用が発生しますので、ご自身の事業規模や記帳にかかる手間などを考慮して判断されると良いでしょう。

Q6:初めて青色申告をする場合や、既に承認を受けている場合で、手続き上の注意点はありますか?

A6:初めて青色申告で確定申告をしたい場合は、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。この申請書の提出期限は、その年の1月16日以降に事業を開始した場合は、事業開始等の日から2ヶ月以内です。すでに事業を開始している方が、その年の所得から青色申告の適用を受けたい場合は、その年の3月15日までが提出期限となります。

一度青色申告の承認を受けると、取りやめの届出をしない限り、翌年以降も青色申告を続けることができます。もし青色申告を取りやめて白色申告に戻りたい場合は、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を、取りやめたい年の翌年3月15日までに提出する必要があります。

また、65万円控除の要件としてe-Taxによる提出を選択する場合、事前にe-Taxの利用開始手続き(マイナンバーカードの取得、利用者識別番号の取得など)が必要になります。これらの手続きには時間がかかる場合がありますので、確定申告期間が始まる前に準備を進めておくことが推奨されます。

まとめ

2024年の確定申告で青色申告特別控除の65万円控除を適用するためには、複式簿記による正確な記帳と、e-Taxによる申告または優良な電子帳簿による保存のいずれかの要件を満たす必要があります。特に2024年は電子取引データの保存義務化の宥恕措置が終了しており、日々の記帳の根拠となる電子取引データの適切な管理がこれまで以上に重要となっています。

会計ソフトの活用や税理士への相談も検討しながら、早めに準備を進めることで、安心して確定申告に臨み、最大の控除を適用できる可能性が高まります。ご自身の状況に合わせて、必要な手続きや記帳方法をご確認ください。