2024年確定申告:暗号資産の税金どうなる?フリーランス向けQ&A
2024年の確定申告に向けて、ご自身の事業所得の申告準備を進めている方も多いかと存じます。近年、フリーランスの方々の間でも暗号資産(仮想通貨)の取引を行うケースが増えています。暗号資産に関する税務は複雑に感じられることもあり、確定申告時にどのように扱えば良いか、疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、2024年の確定申告に関連し、フリーランスの方が暗号資産取引について知っておくべき税務上のポイントを、Q&A形式で分かりやすく解説します。正確な知識を身につけ、安心して確定申告に臨むための情報としてご活用ください。
Q1:暗号資産(仮想通貨)の取引で得た利益は所得税の対象ですか?
A1: はい、暗号資産の取引によって生じた利益は、原則として所得税の課税対象となります。税法上の分類としては、事業として継続的に大規模な取引を行っているなどの特別な場合を除き、多くの場合「雑所得」に区分されます。
暗号資産の利益は、売却して日本円などの法定通貨に変えたときだけでなく、他の暗号資産と交換したとき、暗号資産で商品やサービスを購入したときなど、含み益が確定したさまざまなタイミングで発生したとみなされ、課税対象となります。
Q2:どのような取引で利益が出たとみなされますか?具体的な所得計算方法は?
A2: 以下のような取引で、原則として課税対象となる所得が発生したとみなされます。
- 保有する暗号資産を日本円などの法定通貨に売却したとき
- 保有する暗号資産を他の暗号資産と交換したとき
- 保有する暗号資産で商品やサービスを購入したとき
- マイニング(採掘)やステーキングなどにより暗号資産を取得したとき
所得金額の計算方法としては、主に「移動平均法」と「総平均法」があります。どちらの方法を選択するかにより、計算される所得金額が異なります。一度選択した計算方法は、原則として継続して適用する必要があります。
- 移動平均法: 暗号資産を取得する都度、平均取得単価を計算する方法です。複雑ですが、より正確な所得を計算できます。
- 総平均法: その年に取得した暗号資産の全ての合計金額を、取得した暗号資産の全ての合計数量で割って平均取得単価を計算する方法です。比較的シンプルです。
これらの計算はご自身で行う必要がありますが、暗号資産交換業者の提供するサービスや、計算ツールを利用することも可能です。
Q3:暗号資産取引で損失が出た場合、他の所得(事業所得など)と相殺できますか?
A3: 原則として、暗号資産取引で生じた損失(雑所得の損失)は、他の所得(事業所得や給与所得など)と損益通算することはできません。また、損失を翌年以降に繰り越すことも、原則として認められていません。
ただし、複数の種類の暗号資産取引を行っており、それら全体で雑所得が生じている場合には、その雑所得の中で、暗号資産以外の他の雑所得(例えば、アフィリエイト収入や公的年金以外の雑所得など)との間での相殺(内部通算)は可能です。しかし、事業所得などの他の所得区分との損益通算はできない点にご注意ください。
Q4:暗号資産の取引に関連して発生した費用は経費にできますか?
A4: はい、暗号資産の取得や売却、管理など、取引に関連して直接かつ通常必要と認められる費用は、必要経費として所得から差し引くことができます。具体的には、以下のような費用が考えられます。
- 暗号資産の売買や送金にかかる取引手数料
- 暗号資産を安全に保管するためのウォレットの費用(ハードウェアウォレットなど)
- 暗号資産取引に関する情報収集のための書籍代やセミナー参加費(内容が直接関連する場合)
- 暗号資産の所得計算のために利用した有料ツールの利用料
これらの費用を必要経費として計上するためには、領収書や支払い記録などを適切に保管しておくことが重要です。事業所得の経費とは別に、暗号資産取引による雑所得に対応する経費として整理する必要があります。
Q5:確定申告ではどのように記載すれば良いですか?必要な書類はありますか?
A5: 暗号資産取引による所得が雑所得に該当する場合、確定申告書B様式の「雑所得」欄に記載します。計算した所得金額を「その他」の欄に記入します。収入金額から必要経費を差し引いた金額が所得金額となります。
確定申告書に直接添付する書類は義務付けられていませんが、税務署から内容について問い合わせがあった際に説明できるよう、所得計算の根拠となる書類は必ず保管しておいてください。具体的には、以下のような書類が重要になります。
- 暗号資産交換業者からの取引報告書や年間取引報告書
- ご自身で記録した取引履歴(購入・売却日時、数量、価格、手数料など)
- 選択した計算方法(移動平均法または総平均法)に基づきご自身で作成した所得計算明細書
- 必要経費に関する領収書や支払い記録
正確な申告を行うためには、全ての取引を漏れなく記録し、適切に所得を計算することが非常に重要です。
Q6:暗号資産取引について税務署から問い合わせが来ることはありますか?注意すべき点は?
A6: はい、税務当局は暗号資産取引に関する情報収集を進めており、無申告や申告漏れに対して指摘を行うケースが増えています。特に、多額の利益が出ているにもかかわらず申告していない場合などは、税務調査の対象となる可能性も考えられます。
正確な確定申告を行うためには、以下の点に注意が必要です。
- 全ての取引を記録する: 国内外の複数の取引所を利用している場合でも、全ての取引履歴を漏れなく把握し、記録に残すことが必要です。
- 計算方法を統一する: 一度選択した所得計算方法(移動平均法または総平均法)は、途中で変更せず、継続して使用します。
- 根拠資料を保管する: 取引履歴、計算過程、経費の領収書など、所得計算の根拠となる資料は、申告期限から一定期間(原則7年間)保管しておきます。
暗号資産の税務は、取引の種類(現物取引、FX、DeFi、NFTなど)や量によってさらに複雑になることがあります。不明な点が多い場合や、取引量が非常に多い場合は、税理士などの専門家に相談することも検討されると良いでしょう。
まとめ
この記事では、フリーランスの方が2024年の確定申告で注意すべき暗号資産の税務について、Q&A形式で解説しました。暗号資産取引による利益は課税対象であり、原則として雑所得となります。正確な所得計算を行い、関連する経費を計上し、適切な書類を保管した上で確定申告を行うことが重要です。
税務に関する規定は改正されることもありますので、常に最新の情報を確認するように心がけてください。この記事が、皆さまの確定申告の準備の一助となれば幸いです。正確な申告で、安心して事業に取り組んでいきましょう。