2024年確定申告:適用漏れを防ぐ!フリーランスのための所得控除チェックリストQ&A
2024年の所得税改正や、確定申告の準備を進める中で、ご自身の税負担を適正にするために重要な要素の一つが「所得控除」です。所得控除を正確に申告することで、税金計算の基となる課税所得金額を減らすことができ、結果として所得税額を抑えることにつながります。
フリーランスの方は、会社員と異なり、ご自身で所得控除の適用状況を確認し、確定申告書に記載する必要があります。適用できる所得控除を見落としてしまうと、本来支払う必要のない税金を納めてしまうことになります。
この記事では、2024年分の確定申告で特に確認しておきたい代表的な所得控除について、Q&A形式で解説します。ご自身の状況に当てはまる控除がないか、チェックリストのように確認しながらお読みいただけますと幸いです。
Q1:そもそも所得控除とは何ですか? なぜフリーランスにとって重要なのでしょうか?
A1: 所得控除とは、納税者本人やその扶養親族の状況、あるいは特定の支出(社会保険料、生命保険料、医療費、寄附金など)に応じて、所得金額から一定額を差し引くことができる制度です。これにより、税金計算の対象となる「課税される所得金額」を減らすことができます。
所得税額は「課税される所得金額」に税率をかけて計算されます。所得控除を漏れなく適用することで、「課税される所得金額」が減り、その結果として所得税額も減少します。
フリーランスの方は、給与所得者のように会社が年末調整で所得控除の大部分を計算してくれるわけではありません。確定申告の際に、ご自身の状況や支払った保険料などを正確に把握し、自身で申告書に記載することで、所得控除の適用を受けることができます。適用漏れを防ぐことが、適正な納税につながるため、非常に重要です。
Q2:基礎控除について教えてください。2024年の変更点はありますか?
A2: 基礎控除は、納税者すべてが受けることができる最も基本的な所得控除です。合計所得金額に応じて控除額が異なり、2024年分の確定申告においても、この仕組みは維持されています。
具体的には、合計所得金額が2,400万円以下であれば48万円の控除を受けることができます。合計所得金額が増えるにつれて控除額は段階的に減少し、2,500万円を超えると基礎控除は適用されなくなります。
2024年分の確定申告に関する基礎控除の金額や適用要件について、大きな変更点はございません。フリーランスの方を含め、合計所得金額を確認し、適切な基礎控除額を申告書に記載することになります。確定申告書には、ご自身の合計所得金額に応じた基礎控除額を計算して記載する欄があります。
Q3:扶養控除はどのように適用されますか? 誰を扶養親族にできますか?
A3: 扶養控除は、納税者と生計を一にしている親族で、一定の要件を満たす方を「控除対象扶養親族」とする場合に受けられる所得控除です。控除対象扶養親族がいるかどうかで、納税者の税負担が変わります。
控除対象扶養親族となるための主な要件は以下の通りです。
- 納税者と生計を一にしていること。(必ずしも同居は要しませんが、常に生活費、療養費等の送金が行われている場合などが該当します)
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は、給与収入が103万円以下に相当します)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
- 配偶者でないこと。
扶養控除の額は、扶養親族の年齢や同居の有無などによって異なります。例えば、16歳以上の扶養親族は一般の扶養親族として38万円の控除、19歳以上23歳未満の扶養親族は特定扶養親族として63万円の控除などがあります。
なお、国外に居住する親族を扶養控除の対象とする場合、2024年分からは適用要件がより厳格化されています。30歳以上70歳未満の親族については、留学によるもの、障害者であること、または納税者からの生活費や教育費の送金額が年間38万円以上であることを証明する書類の提出または提示が必要となります。
確定申告書では、控除対象となる扶養親族の情報(氏名、続柄、生年月日など)を記載する欄がありますので、正確に記入してください。
Q4:配偶者控除や配偶者特別控除はどのような場合に適用できますか?
A4: 配偶者控除や配偶者特別控除は、納税者と生計を一にしている配偶者がいる場合に適用できる所得控除です。どちらの控除が適用されるか、またその控除額は、配偶者の合計所得金額と納税者ご自身の合計所得金額によって決まります。
- 配偶者控除: 配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下の場合に適用できます。控除額は、納税者ご自身の合計所得金額に応じて、最大38万円(一般の控除対象配偶者の場合)となります。
- 配偶者特別控除: 配偶者控除の適用を受けない場合で、配偶者の年間の合計所得金額が48万円超133万円以下の場合に適用できます。控除額は、配偶者の合計所得金額と納税者ご自身の合計所得金額に応じて段階的に定められています。
どちらの控除も、配偶者が青色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないことが要件となります。
確定申告書では、配偶者の氏名、生年月日、合計所得金額などを記載し、該当する控除を適用します。ご自身の所得と配偶者の所得の両方を確認し、どちらの控除が適用できるか、またその控除額を正確に計算する必要があります。
Q5:社会保険料控除とは何ですか? どのように計算しますか?
A5: 社会保険料控除は、納税者ご自身や生計を一にする配偶者、その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合などに受けられる所得控除です。フリーランスの方がご自身で国民年金保険料や国民健康保険料などを支払っている場合、その支払った金額の全額が所得控除の対象となります。
控除の対象となる主な社会保険料には、以下のものがあります。
- 国民年金保険料
- 国民健康保険料
- 介護保険料
- 国民年金基金の掛金
- 後期高齢者医療保険料
これらの社会保険料は、支払った金額の合計額がそのまま所得控除額となります。確定申告の際には、これらの支払いを証明する書類(国民年金保険料の控除証明書、国民健康保険料や介護保険料などの納付済額のお知らせなど)が必要となりますので、大切に保管しておきましょう。
確定申告書では、社会保険料控除として支払った合計額を記載する欄があります。
Q6:寄附金控除は? ふるさと納税も含まれますか?
A6: 寄附金控除は、国や地方公共団体、特定の公益法人などに対し、「特定寄附金」を支払った場合に受けられる所得控除です。税額控除となる場合もありますが、所得控除としては、その年に支出した特定寄附金の合計額から2千円を差し引いた金額が対象となります(所得金額の40%が限度)。
そして、近年広く利用されている「ふるさと納税」は、この寄附金控除(正確には、そのうちの「ふるさと寄附金」に係る部分)の対象となります。ふるさと納税を行った場合、原則として確定申告を行うことで、寄附金控除と住民税の寄附金税額控除の両方を受けることができます。
フリーランスの方でふるさと納税を行った場合は、多くの場合、確定申告が必要です(給与所得者等で一定の条件を満たす場合はワンストップ特例制度を利用できますが、事業所得等がある場合は通常、確定申告を行います)。
確定申告で寄附金控除を受けるためには、寄附先から送られてくる「寄附金の受領証明書」が必要になります。ふるさと納税の場合は、「寄附金控除に関する証明書」(特定事業者発行)または自治体発行の受領証明書を用意し、申告書に必要事項を記載します。
Q7:その他、確認しておきたい所得控除はありますか?
A7: 上記で触れた控除以外にも、個々の状況に応じて適用できる所得控除があります。以下に主なものを挙げますので、ご自身の状況に当てはまるものがないか確認してみてください。
- 障害者控除: 納税者本人、控除対象配偶者、扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に適用できます。
- 寡婦控除・ひとり親控除: 納税者が一定の要件を満たす寡婦またはひとり親である場合に適用できます。
- 勤労学生控除: 納税者ご自身が特定の学校の学生等で、合計所得金額が75万円以下など一定の要件を満たす場合に適用できます。
- 小規模企業共済等掛金控除: 小規模企業共済の掛金、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金などを支払った場合に、その全額が控除の対象となります。
- 医療費控除: その年の1月1日から12月31日までの間に、ご自身や生計を一にする親族のために支払った医療費が一定額を超える場合に適用できます。
これらの控除についても、それぞれに適用要件や必要となる書類があります。詳細については、国税庁のウェブサイトで確認するか、税理士などの専門家にご相談いただくことをお勧めします。特に小規模企業共済等掛金控除や医療費控除については、別途詳細なQ&A記事がある場合もありますので、そちらも参考にしてください。
まとめ
2024年分の確定申告では、定額減税のような新しい制度が注目されていますが、ご自身の所得や家族構成、支出に応じて適用できる「所得控除」を正確に申告することも、適正な納税額を計算するために非常に重要です。
今回ご紹介した基礎控除、扶養控除、配偶者控除・配偶者特別控除、社会保険料控除、寄附金控除などの主要な所得控除について、ご自身の状況と照らし合わせ、適用できるものがないか改めてご確認ください。必要な書類(控除証明書、支払証明書、受領証明書など)を早めに準備しておくことで、確定申告書の作成がスムーズに進みます。
確定申告の準備は計画的に進め、適用できる控除を漏らさず申告するようにしましょう。