2024年確定申告:インボイス導入後のフリーランス経費処理と記帳Q&A
インボイス制度が導入されてから初めての確定申告を迎えるフリーランスの方も多いかと存じます。特に、日々の経費処理や記帳において、インボイス制度をどのように意識すれば良いのか、消費税の確定申告はどうなるのかなど、様々な疑問をお持ちのことでしょう。
この記事では、2024年の確定申告に向けて、インボイス制度導入後のフリーランスの経費処理や記帳に関する主な疑問点をQ&A形式で解説いたします。正確な確定申告を行うための一助となれば幸いです。
Q1: インボイス発行事業者になった場合、経費計上で何が変わりますか?
A1: ご自身がインボイス(適格請求書)発行事業者として登録された場合、仕入れや経費に係る消費税額を正確に計算するために、原則として、取引先から交付された適格請求書や適格簡易請求書(小売業等)などの保存が必要となります。
これは、ご自身の売上にかかる消費税額から、仕入れや経費にかかった消費税額を差し引いて納付税額を計算する「仕入税額控除」を適用するために不可欠な手続きです。適格請求書は、税法で定められた記載事項(発行事業者の登録番号、適用税率、消費税額など)を満たす必要があります。
したがって、経費を計上する際には、領収書だけでなく、その取引が適格請求書の要件を満たしているかを確認し、適切に保存しておくことが重要になります。
Q2: 取引先がインボイス発行事業者ではない場合、経費の扱いはどうなりますか?
A2: お取引先がインボイス発行事業者ではない場合、原則として、その取引にかかる消費税額について仕入税額控除を適用することはできません。
ただし、インボイス制度の導入に伴い、一定期間は経過措置が設けられています。具体的には、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、2023年10月1日から2026年9月30日までの期間は、仕入税額相当額の80%を控除できます。また、2026年10月1日から2029年9月30日までの期間は、同50%を控除できます。
この経過措置を適用するためには、引き続き、従来の区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書や帳簿の保存が必要です。したがって、取引先がインボイス発行事業者であるか否かを確認し、適切に請求書を保存・管理することが重要です。
Q3: 免税事業者のままでいる場合、確定申告や記帳で何か注意することはありますか?
A3: ご自身が消費税の免税事業者である場合、消費税の確定申告を行う義務はありません。したがって、所得税の確定申告において、ご自身の売上にかかる消費税を納税する必要はありません。
記帳に関しては、所得税の申告を行う上で、インボイス制度によって特に変更される点はありません。ただし、取引先からインボイスの交付を求められた場合に備えたり、将来的に課税事業者になる可能性を考慮したりする場合、日々の記帳で消費税の課税・非課税の区分を意識したり、受け取った請求書の種類(適格請求書か否か)を区別して管理しておくと、後々スムーズに対応できることがあります。
Q4: 簡易課税制度を選択している場合、経費処理の注意点はありますか?
A4: 簡易課税制度を選択している課税事業者の方の場合、売上にかかる消費税額に、事業区分に応じた「みなし仕入率」を乗じて仕入税額控除額を計算します。
この制度では、原則として、個別の仕入れや経費にかかる消費税額を計算する必要がないため、受け取った請求書が適格請求書であるかどうかにかかわらず、仕入税額控除の計算自体に直接的な影響はありません。つまり、個別の取引ごとに適格請求書を保存しておく義務は原則としてありません。(ただし、帳簿への記載は必要です。)
ただし、簡易課税制度を適用するためには、適用を受ける課税期間の初日の前日までに税務署へ「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している必要があります。また、基準期間における課税売上高が5,000万円以下であることも要件となります。
Q5: インボイス制度に対応した記帳は、具体的にどうすれば良いですか?
A5: 会計ソフトを利用している場合、多くのソフトがインボイス制度に対応した入力機能を提供しています。取引入力時に、その取引が課税仕入れであり、かつ適格請求書等を受け取ったかどうかなどを区別して入力できるようになっています。これにより、仕入税額控除の計算を正確に行うことができます。
手書きやExcel等で記帳している場合は、消費税の課税・非課税の区分に加え、課税仕入れについては、受け取った請求書が適格請求書であるか、経過措置の対象となる取引かなどを記録しておく必要があります。帳簿への記載事項も税法で定められていますので、確認が必要です。特に、経過措置を適用して仕入税額控除を行う場合は、その旨を帳簿に記載することが必要となります。
Q6: 消費税の確定申告は、所得税の確定申告と一緒に行えますか?
A6: いいえ、所得税の確定申告と消費税の確定申告は、それぞれ別の手続きです。
所得税の確定申告は、原則として毎年3月15日までに行いますが、消費税の確定申告は、課税期間の末日(通常は12月31日)の翌日から2ヶ月以内に行う必要があります。例えば、個人事業主の課税期間が1月1日から12月31日までの場合、消費税の確定申告期限は翌年の2月28日(閏年は2月29日)となります。
また、提出する申告書の種類や提出先も異なります。消費税の確定申告は、e-Taxを利用するか、税務署に申告書を提出して行います。所得税と消費税の両方の申告が必要な場合は、それぞれの期限までに忘れずに行ってください。
インボイス制度導入後の確定申告は、フリーランスにとって経費処理や消費税申告において新たな確認事項が増える可能性があります。正確な所得・消費税の申告を行うために、ご自身の状況に合わせて制度内容や必要な対応をしっかりとご確認いただくことが大切です。ご不明な点がある場合は、税理士や税務署にご相談されることをお勧めいたします。