2024年確定申告:青色申告特別控除の適用Q&A(フリーランス向け)
2024年の確定申告シーズンが近づいてきました。個人事業主であるフリーランスの皆様にとって、所得税の負担を軽減するために重要な制度の一つが「青色申告特別控除」です。この控除を適切に適用するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。特に、控除額の違いや電子申告・電子帳簿保存法との関連について疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、2024年(令和6年分)の確定申告で青色申告特別控除を適用する際にフリーランスの皆様が疑問に感じやすい点を、Q&A形式で分かりやすく解説します。正確な知識を得て、安心して確定申告を進めましょう。
Q1: 2024年確定申告で青色申告特別控除の適用を受けるための基本的な要件は何ですか?
A1: 青色申告特別控除の適用を受けるためには、まず税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出している必要があります。原則として、青色申告をしようとする年の3月15日までに提出する必要がありますが、その年の1月16日以降に事業を開始した場合は、事業開始日から2カ月以内に提出する必要があります。
この申請書を提出し、承認を受けていることが前提となります。その上で、事業に関する取引を正規の簿記(一般的には複式簿記)の原則に従って記帳し、その帳簿に基づいて作成した貸借対照表や損益計算書といった確定申告書類を、提出期限内に提出する必要があります。
Q2: 青色申告特別控除には、控除額が65万円と10万円の2種類があると聞きました。それぞれの違いは何ですか?
A2: 青色申告特別控除には、主に以下の二つの控除額があります。
- 最大65万円の控除: 正規の簿記(複式簿記)で記帳を行い、その帳簿に基づいて作成した確定申告書類を、期限内に電子申告(e-Tax)で提出するか、または優良な電子帳簿の要件を満たした電子帳簿を保存している場合に適用できます。
- 最大10万円の控除: 正規の簿記(複式簿記)ではない簡易な方法(単式簿記など)で記帳を行っている場合、または正規の簿記で記帳しているものの、65万円控除の要件(電子申告または電子帳簿保存)を満たさない場合に適用されます。
多くのフリーランスの方が65万円控除を目指すのは、所得税の負担を大きく減らすことができるためです。ただし、65万円控除には記帳方法だけでなく、申告方法や帳簿の保存方法に関する追加の要件がある点に注意が必要です。
Q3: 65万円控除を受けるには、電子申告(e-Tax)または電子帳簿保存が必要と聞きましたが、これは必須ですか?
A3: はい、2020年分の確定申告から、青色申告特別控除(65万円控除)の適用を受けるためには、原則として以下のいずれかの要件を満たすことが必須となりました。
- 電子申告(e-Tax)による提出: 確定申告書類をインターネット経由で提出する方法です。
- 優良な電子帳簿の要件を満たした電子帳簿の保存: 税法が定める一定の要件(訂正・削除履歴の確保など)を満たした形で、会計ソフト等で作成した帳簿を電子データとして保存する方法です。
どちらか一方の要件を満たせば、最大65万円の控除を受けることができます。例えば、複式簿記で記帳し、そのデータを基にe-Taxで申告すれば、電子帳簿の要件を満たしていなくても65万円控除が適用可能です。一方、e-Taxでの申告が難しい場合でも、優良な電子帳簿の要件を満たして帳簿を保存していれば、引き続き65万円控除が適用できます。ただし、この優良な電子帳簿の要件は少し複雑なため、多くのフリーランスの方はe-Taxでの申告を選択されることが多いようです。
Q4: 今から2024年分の申告で青色申告特別控除(65万円)を受けたい場合、何か特別な手続きは必要ですか?
A4: 2024年分の確定申告(2025年3月に提出)で初めて青色申告特別控除の適用を受けたい場合は、まず「所得税の青色申告承認申請書」を、原則として2025年3月17日(月)(※通常の提出期限は3月15日ですが、土日の場合は翌平日になります)までに税務署に提出する必要があります。すでに提出済みで承認を受けている場合は、改めて提出する必要はありません。
その上で、2024年中の取引について、正規の簿記(複式簿記)により記帳を行う必要があります。年末には、その記帳内容に基づいて貸借対照表と損益計算書を作成します。そして、2025年3月17日(月)の提出期限までに、これらの書類をe-Taxで提出するか、または優良な電子帳簿の要件を満たした電子帳簿を保存していれば、65万円控除の適用を受けることができます。帳簿付けは日々の取引を記録していくものなので、申告期限直前になってから始めるのではなく、事業開始から継続的に行うことが重要です。
Q5: 青色申告特別控除以外に、青色申告にはどのようなメリットがありますか?
A5: 青色申告には、青色申告特別控除以外にもいくつかのメリットがあります。フリーランスの方が特に活用しやすいものとしては、以下の点が挙げられます。
- 青色事業専従者給与: 生計を一にする配偶者やその他の親族に給与を支払った場合、一定の要件を満たせば、その給与を全額必要経費に算入できます。これは、白色申告では認められない特典です。
- 貸倒引当金: 売掛金などの事業上の債権について、貸し倒れによる損失を見込んで、年末の債権残高の5.5%(サービス業などは特定の計算方法)を必要経費として計上できます。
- 純損失の繰越しと繰戻し: 事業で損失(赤字)が出た場合に、その損失を翌年以後3年間繰り越して、翌年以後の所得から控除することができます(繰越控除)。また、前年も青色申告をしている場合は、損失額を前年の所得から差し引いて、前年に納めた所得税の還付を受けることも可能です(繰戻し還付)。
これらの特典も活用することで、税負担をさらに軽減できる可能性があります。ただし、それぞれの特典には適用要件がありますので、事前に確認しておくことが大切です。
Q6: 帳簿付けはどのように行えば良いですか?自分でできますか?
A6: 青色申告における帳簿付けは、正規の簿記(複式簿記)で行うのが原則です。複式簿記では、一つの取引を「借方」「貸方」という二つの側面から記録します。例えば、売上金が入金された場合、「売上高」が増加し「普通預金」も増加した、というように記録します。
簿記の知識がない方にとっては難しく感じられるかもしれませんが、最近では多くの会計ソフトが複式簿記に対応しており、日々の取引を日付順に入力していけば、自動的に複式簿記の形式で帳簿を作成してくれるものがほとんどです。これらのソフトを利用することで、簿記の専門知識がなくても、比較的容易に帳簿を作成することが可能です。
また、税理士などの専門家に記帳代行や相談を依頼することもできます。ご自身の状況や予算に合わせて、最適な方法を選択してください。
まとめ
2024年(令和6年分)の所得税確定申告における青色申告特別控除は、フリーランスの皆様にとって非常に大きな節税効果をもたらす制度です。最大65万円の控除を受けるためには、「所得税の青色申告承認申請書」の提出、正規の簿記による記帳、そして「e-Taxによる申告」または「優良な電子帳簿の保存」のいずれかの要件を満たす必要があります。
日々の記帳を丁寧に行い、適切な方法で申告書類を提出することで、青色申告特別控除を最大限に活用することができます。この記事で解説した内容を参考に、計画的に確定申告の準備を進めていただければ幸いです。ご自身の状況に応じて、さらに詳細な情報を税務署や税理士にご確認いただくことをお勧めします。