2024年確定申告:フリーランスが知るべき個人事業税Q&A
個人事業主やフリーランスの皆様にとって、所得税の確定申告は毎年避けて通れない手続きです。この確定申告で計算された所得金額は、実は所得税だけでなく、他の税金にも影響を与えます。その一つが「個人事業税」です。
2024年の税制改正で個人事業税そのものに大きな変更があったわけではありませんが、所得税の確定申告内容が個人事業税の計算の基礎となること、そして納税方法などが所得税とは異なることから、フリーランスの方が正確に理解しておくことは重要です。
この記事では、個人事業税について、読者の皆様が疑問に持ちがちな点をQ&A形式で分かりやすく解説します。確定申告を正しく行うためにも、ぜひ最後までご確認ください。
Q1:個人事業税とは、どのような税金ですか?所得税とは違うのでしょうか?
A1:個人事業税は、都道府県に納める地方税の一つです。
個人事業税は、地方税法等で定められた特定の事業(法定業種)を営む個人に対して課される税金です。所得税が国に納める「国税」であるのに対し、個人事業税は事業所の所在地がある都道府県に納める「地方税」であるという点が大きな違いです。
また、所得税は収入から様々な経費や所得控除を差し引いた「所得」に対して課税されるのに対し、個人事業税は事業から生じた「所得」に課税されますが、計算方法や控除、税率などが所得税とは異なります。
Q2:どのような事業をしていれば個人事業税の対象になりますか?Webデザイナーなども含まれますか?
A2:個人事業税の対象となる事業は、地方税法等で定められた70の「法定業種」に限られます。
すべての個人事業主が個人事業税の対象となるわけではなく、地方税法等に列挙された70の業種(第1種事業、第2種事業、第3種事業に分類されます)に該当する場合にのみ課税されます。
例えば、Webデザイナーの方が該当しうる業種としては、「請負業」や「デザイン業」などが考えられます。これらの業種は多くの場合、個人事業税の課税対象となります。ご自身の事業がどの法定業種に該当するか、あるいは該当しないかについては、事業所の所在地がある都道府県の税務担当部署に確認することをおすすめいたします。
法定業種に該当しない事業を営んでいる場合は、個人事業税は課税されません。
Q3:個人事業税はどのように計算されるのですか?所得税の確定申告がどう影響しますか?
A3:個人事業税は、所得税の確定申告で計算された事業所得などを基に計算されます。
個人事業税の計算は、原則として所得税の確定申告で算出された事業所得や不動産所得が基礎となります。具体的には、以下の計算式で求められます。
(事業所得等 − 事業主控除290万円) × 税率
ここでいう「事業所得等」は、所得税の計算における事業所得や不動産所得に準じます。所得税の青色申告特別控除(最大65万円または55万円)や、事業専従者への給与または事業専従者控除も適用されます。つまり、所得税の確定申告で事業所得などを正確に計算し、青色申告特別控除などを適切に適用することが、個人事業税の計算にも直接的に影響するということです。
また、個人事業税には、事業を営む方であれば誰でも適用される「事業主控除」が年間290万円あります。この控除があるため、事業所得等が290万円以下の場合は、原則として個人事業税は課税されません(年の中途で開業・廃業した場合は月割り計算となります)。
Q4:個人事業税の税率はどのくらいですか?
A4:税率は、営んでいる事業の法定業種によって異なります。
個人事業税の税率は、該当する法定業種に応じて3%から5%の間で定められています。
- 第1種事業: 5% (例: 物品販売業、運送業、製造業、請負業、印刷業、写真業、旅館業など)
- 第2種事業: 4% (例: 畜産業、水産業、薪炭製造業など)
- 第3種事業: 5% または 3%
- 5%: 医業、弁護士業、デザイン業、システムエンジニア業など
- 3%: あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復等、装蹄師業
Webデザイナーの方などが該当しうる「請負業」や「デザイン業」は、多くの場合税率が5%となります。ご自身の事業の正確な税率については、都道府県の税務担当部署にご確認ください。
Q5:個人事業税の申告や納税は、所得税のように自分で確定申告が必要ですか?
A5:所得税の確定申告をしていれば、原則として個人事業税の申告は不要です。
所得税の確定申告書には、個人事業税の課税に必要な情報(事業所得など)が含まれています。そのため、所得税の確定申告書を提出すれば、原則として個人事業税の申告書を別途提出する必要はありません。所得税の確定申告書が、個人事業税の申告を兼ねる仕組みになっています。
所得税の確定申告書の内容に基づき、都道府県が個人事業税の税額を計算し、通常8月頃に納税通知書が送付されます。この納税通知書に記載された税額を、通常8月と11月の年2回に分けて納付することになります。
ただし、所得税の確定申告義務がない場合(所得税がかからない場合など)でも、個人事業税の法定業種を営んでおり、所得が事業主控除(290万円)を超える場合は、個人事業税の申告が必要となる場合がありますので注意が必要です。
Q6:個人事業税を支払った場合、それは経費になりますか?
A6:個人事業税は、事業の遂行上必要な経費(租税公課)として認められます。
個人事業税は、事業を継続していく上で発生する税金であるため、所得税の計算上、事業所得の金額を計算する際の必要経費(勘定科目としては「租税公課」など)として計上することができます。
個人事業税は、実際に納付した年に経費として計上するのが原則です。例えば、2023年分の事業所得に対する個人事業税を2024年に納付した場合、その納付した金額は2024年分の所得の計算において経費とすることができます。
個人事業税を必要経費に計上することで、その分所得税や住民税の負担を軽減することができます。
まとめ
個人事業税は、所得税の確定申告の内容を基に計算される地方税であり、特定の法定業種を営むフリーランスの方が課税対象となります。所得が年間290万円(事業主控除)を超えると課税される可能性があることを覚えておきましょう。
所得税の確定申告を正確に行うことが、個人事業税の正しい計算につながります。また、所得税の確定申告書を提出すれば、原則として個人事業税の別途申告は不要であり、後日送付される納税通知書に従って納付することになります。
確定申告後も、都道府県から送付される個人事業税の納税通知書を確認し、忘れずに納付することが重要です。これらの情報を参考に、日々の記帳や確定申告を進めていただければ幸いです。