2024年確定申告:フリーランスのための扶養控除 適用判定と金額Q&A
2024年の確定申告に向けて、所得税の負担軽減に繋がる「扶養控除」について、その基本的な仕組みや適用要件、確定申告での手続きに関する読者の皆様からの疑問にQ&A形式でお答えします。特に、ご自身で確定申告を行うフリーランスの方にとって、扶養控除の正しい理解と適用は、正確な所得税額を計算する上で非常に重要です。
Q1. 扶養控除とは何ですか?どのような人が対象になりますか?
A. 扶養控除とは、納税者(この場合は確定申告をするフリーランスの方ご自身)が、一定の要件を満たす扶養親族がいる場合に受けられる所得控除の一つです。扶養親族とは、その年の12月31日時点で以下の要件全てに当てはまる親族を指します。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
- 納税者と生計を一にしていること。これは、必ずしも同居を必要とせず、例えば、単身赴任中の夫に仕送りをしてもらっている妻や子、修学や療養等のために別居している親族で、常に生活費や学資金等の送金が行われている場合なども含まれます。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
これらの要件を満たす方がいらっしゃる場合、扶養控除を適用することができます。
Q2. 扶養親族の「所得要件」とは具体的にいくらですか?給与所得がある場合はどう計算しますか?
A. 扶養親族の所得要件は、「年間の合計所得金額が48万円以下」であることです。 ここでいう合計所得金額とは、事業所得や給与所得、不動産所得など、各種所得金額の合計額を指します。
例えば、扶養親族がパートやアルバイトなどで給与収入のみを得ている場合、給与所得の金額は「収入金額-給与所得控除額」で計算されます。給与収入が103万円以下であれば、給与所得控除額(最低55万円)を差し引くと、給与所得は48万円以下(103万円 - 55万円 = 48万円)になります。したがって、給与収入のみの場合は「年収103万円の壁」と言われることが一般的です。
ただし、給与収入以外に事業所得や不動産所得など他の所得がある場合は、それらの所得金額も合計して、合計所得金額が48万円以下であるかを判定する必要があります。
Q3. 青色申告の事業専従者として家族に給与を支払っていますが、その家族は扶養控除の対象になりますか?
A. いいえ、青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度でも給与の支払いを受けた方、または白色申告者の事業専従者である方は、扶養控除の対象にはなりません。 事業専従者給与を支払っている場合は、その給与が所得税の計算上経費として認められることになります。扶養控除と事業専従者控除(または専従者給与の必要経費算入)は両方適用することはできませんのでご注意ください。
Q4. 扶養控除の金額はいくらですか?年齢によって金額は変わりますか?
A. 扶養控除の金額は、扶養親族の年齢や同居の有無によって異なります。2024年(令和6年)の確定申告(令和5年分の所得について申告するもの)で適用される主な区分と控除額は以下の通りです。
| 区分 | 年齢(その年の12月31日時点) | 控除額 | | :------------ | :--------------------------- | :----------- | | 一般の控除対象扶養親族 | 16歳以上19歳未満、または23歳以上70歳未満 | 38万円 | | 特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 | | 老人扶養親族 | 70歳以上 | | | ・同居老親等 | 70歳以上で直系尊属(父母など)であり、納税者やその配偶者のいずれかと常に同居している | 58万円 | | ・その他の者 | 70歳以上で上記以外の者 | 48万円 |
なお、16歳未満の扶養親族は、所得税の計算上は扶養控除の対象になりませんが、住民税の計算では扶養人数にカウントされます。また、2024年の定額減税においても、扶養親族の数は重要な要素となります(ただし、定額減税における扶養親族の定義は所得税の扶養控除とは異なります)。
Q5. 扶養控除を受けるためには、確定申告書にどのように記載すればよいですか?何か添付書類は必要ですか?
A. 扶養控除を受けるためには、確定申告書に扶養親族に関する情報を正しく記載する必要があります。 具体的には、確定申告書第一表の「配偶者や親族に関する事項」欄に、扶養親族の氏名、マイナンバー(個人番号)、続柄、生年月日などを記載し、該当する控除額を「所得から差し引かれる金額」欄の「扶養控除」の箇所に記入します。
通常、扶養控除を受けるために確定申告書に別途添付する必要がある書類は原則ありません。ただし、税務署から扶養親族に関する事実関係(生計を一にしていることなど)を確認するための書類の提出を求められる場合がありますので、日頃から仕送りの記録などを保管しておくことが望ましいでしょう。また、国外居住の親族を扶養控族とする場合には、送金関係書類や親族関係書類などの添付または提示が必要となります。
Q6. 年の途中で家族の状況(就職、卒業など)が変わって扶養親族に該当しなくなった場合、確定申告はどうなりますか?
A. 扶養控除の判定は、原則としてその年の12月31日現在の状況で行われます。したがって、年の途中で就職して合計所得金額が48万円を超えた場合や、結婚して別の世帯になった場合などは、その年の扶養控除の対象とはなりません。
ただし、年の途中で扶養親族が亡くなられた場合などは、亡くなられた時点の状況で判定します。
年の途中で扶養親族が減ったにも関わらず、年末調整等で扶養控除を受けたままになっている場合は、確定申告で正しく修正する必要があります。逆に、年の途中で扶養親族が増えた場合などは、確定申告で扶養控除を正しく追加して申告することで、納めすぎた税金が還付される可能性があります。
まとめ:扶養控除を正しく理解し、確定申告に臨みましょう
扶養控除は、フリーランスの方が所得税を計算する上で非常に身近で重要な所得控除の一つです。扶養親族の要件、特に所得要件の判定は間違いやすいポイントですので、ご自身の状況と照らし合わせて正確に確認することが大切です。
2024年の確定申告では、ご家族の状況に応じて扶養控除を正しく適用することで、適正な納税額を算出することができます。確定申告書の該当箇所に漏れなく正確に記載することを心がけましょう。ご不明な点があれば、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。