2024年所得税定額減税:フリーランスの適用計算と確定申告書記載Q&A
2024年には、物価高に対する経済対策として、所得税および個人住民税の定額減税が実施されます。この定額減税は、給与所得者だけでなく、フリーランスとして活動されている皆様にも適用されるものです。
ご自身で確定申告を行うフリーランスの方にとって、この定額減税がご自身の所得税額にどのように影響し、確定申告書にどのように記載すればよいのかは重要な関心事かと思います。誤りなく適切に申告を行うためにも、制度の概要や具体的な適用方法を理解しておくことが大切です。
この記事では、2024年の所得税定額減税に焦点を当て、フリーランスの皆様が疑問に感じやすい点をQ&A形式で解説いたします。
Q1: 定額減税はフリーランス(個人事業主)にも適用されますか?
A1: はい、適用されます。
定額減税は、日本の居住者であり、2024年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である納税義務者に対して実施されます。これは給与所得者に限らず、事業所得などを主とするフリーランスや個人事業主の方も対象となります。所得税の納税義務がある方であれば、原則として定額減税の適用を受けることができます。
Q2: 定額減税の金額はいくらですか?私の場合の計算方法を教えてください。
A2: 定額減税額は、納税者本人、同一生計配偶者、および扶養親族(いずれも居住者に限る)1人につき、それぞれ所得税3万円、個人住民税1万円の合計4万円とされています。この記事では所得税の3万円に焦点を当てます。
納税者ご自身の所得税の定額減税額は、以下の合計額となります。
- 納税者本人: 3万円
- 控除対象配偶者: 3万円(居住者に限る)
- 扶養親族: 1人につき3万円(居住者に限る)
例えば、納税者ご自身と、控除対象配偶者、そして扶養親族であるお子さんが2人いらっしゃる場合、所得税の定額減税額は以下の計算になります。
- 本人分: 3万円
- 控除対象配偶者分: 3万円
- 扶養親族(お子さん1人目)分: 3万円
- 扶養親族(お子さん2人目)分: 3万円
- 合計定額減税額: 3万円 + 3万円 + 3万円 + 3万円 = 12万円
この合計額が、確定申告の際に計算された所得税額から控除されることになります。控除対象配偶者や扶養親族については、確定申告においてこれらの控除の適用を受けている(または受ける予定である)方が対象となります。
Q3: 定額減税はどのようにして受けられますか?給与所得者のように源泉徴収で引かれるのでしょうか?
A3: フリーランスの方の場合、定額減税の適用を受ける方法は、主に「確定申告時の所得税額からの控除」となります。
給与所得者の場合は、原則として勤務先での源泉徴収の際に定額減税が適用されます。しかし、フリーランスの方にはこのような源泉徴収による仕組みはありませんので、ご自身で確定申告を行う際に、その年の所得税額から定額減税額を差し引く形で適用を受けることになります。
ただし、予定納税の制度を利用している方については、適用方法が異なります。
Q4: 予定納税があります。定額減税は予定納税額にどう反映されますか?
A4: 予定納税がある方の場合、定額減税額は原則として2024年6月に納税することになる予定納税の第1期分の金額から控除されます。
具体的には、税務署から送付される予定納税額の通知書において、定額減税額が控除された後の金額が記載される予定です。
例えば、年間の予定納税基準額に基づいて計算された予定納税額が合計で20万円あり、定額減税額が9万円(本人+配偶者+子1人)であるとします。この場合、予定納税の第1期分(通常、年税額の1/3)である約6.6万円(20万円 ÷ 3)から、まず定額減税額9万円が控除されます。この例では第1期分の金額よりも定額減税額の方が大きいため、第1期分の納税は不要となり、さらに控除しきれない差額分が第2期分以降の予定納税額から順次控除されることになります。
予定納税額からも控除しきれない定額減税額がある場合は、最終的な確定申告の際に、年間の所得税額から控除されることになります。
Q5: 確定申告書には定額減税の適用をどのように記載するのでしょうか?
A5: 2024年分の確定申告書(2025年提出)において、定額減税額を記載するための特定の欄が設けられる予定です。
確定申告書A様式およびB様式(2025年提出用からは一本化される見込みです)の「税金の計算」やそれに類する箇所に、「定額減税額」を記入する欄が新設されることが想定されます。
ご自身の定額減税額(本人分、控除対象配偶者分、扶養親族分を合計した額)を算出し、その金額を該当欄に正確に記載することで、最終的な納税額から定額減税が差し引かれる計算となります。具体的な記載箇所や書き方については、確定申告書様式が確定し、国税庁から詳細な手引きが公表され次第、改めてご確認ください。
Q6: 定額減税で所得税額がゼロになったり、控除額が所得税額より大きくなったりした場合、差額はどうなりますか?
A6: 定額減税額が、その年の所得税額(定額減税適用前の金額)よりも大きく、控除しきれない差額が生じる場合があります。この控除しきれない差額については、「調整給付」として別途給付される予定です。
この調整給付は、市区町村から対象者に支給されることになっています。給付の対象となるかどうか、具体的な給付額、申請手続きなどについては、お住まいの市区町村から通知が送付される見込みです。確定申告とは手続きが分かれますので、市区町村からの情報をご確認ください。
Q7: 控除対象配偶者や扶養親族について、特に注意すべき点はありますか?
A7: 定額減税における控除対象配偶者や扶養親族は、所得税における控除対象配偶者や扶養親族の要件(原則として、年間の合計所得金額が48万円以下であることなど)を満たす居住者である必要があります。
また、例えば夫婦で共に所得がある場合など、どちらか一方が配偶者控除(または配偶者特別控除)の適用を受けることになりますが、定額減税についても、同一人物を二重に数えることはできません。ご自身の確定申告で控除対象配偶者としている方を、定額減税においても人数に含めることになります。
Q8: 個人住民税の定額減税も同時に行われますが、所得税とはどう関連しますか?
A8: 所得税の定額減税と個人住民税の定額減税は、それぞれ別の制度として計算・実施されます。
個人住民税の定額減税(1人につき1万円)は、原則として2024年6月以降に納付する個人住民税額から控除される形で適用されます。フリーランスの場合、通常、市区町村から送付される納税通知書において、すでに定額減税が適用された後の金額が記載されることになります。
所得税の確定申告を行うことで、その情報が市区町村に連携され、個人住民税の計算にも反映されます。しかし、所得税の確定申告書の中で、個人住民税の定額減税額を直接記載する欄は設けられません。個人住民税の定額減税に関する詳細は、お住まいの市区町村の通知をご確認ください。
まとめ
2024年の所得税定額減税は、フリーランスの皆様も適用対象となります。定額減税額は、本人および扶養親族等1人あたり3万円の合計額です。
予定納税がある方は予定納税額から順次控除され、予定納税がない方や控除しきれない額がある方は、2025年に行う確定申告時に年間の所得税額から控除されます。控除しきれない差額は調整給付として別途支給される見込みです。
正確な定額減税額を計算し、確定申告書に適切に記載することが重要です。確定申告書様式や記載方法に関する詳細は、今後の国税庁からの発表をご確認いただき、申告の準備を進めていただければと思います。