2024年税制改正:住宅ローン控除の適用要件変更点Q&A(フリーランス向け)
2024年の税制改正には、個人所得税に関するいくつかの変更点が含まれています。中でも、住宅ローン控除の見直しは、自宅を所有または取得予定のフリーランスの方にとって、確定申告に影響する可能性がある重要な改正点の一つです。
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合に、一定の要件を満たせば、年末のローン残高の0.7%が所得税から控除される制度です。この控除を受けるためには、確定申告を行う必要があります。
この記事では、2024年の税制改正による住宅ローン控除の主な変更点と、それがフリーランスの皆様の確定申告にどのように関わるのかについて、Q&A形式で分かりやすく解説いたします。
Q1: 2024年の税制改正で住宅ローン控除は何が変わったのですか?
A1: 住宅ローン控除は、住宅の取得等をして居住を開始した年や、その住宅の種類(省エネ基準を満たすかなど)によって適用される要件や控除額が異なります。2024年の税制改正では、主に2024年以降に居住を開始した場合について、適用対象となる借入限度額や控除期間、そして所得要件に見直しがありました。
特に、合計所得金額に関する要件が変更されています。これまでの合計所得金額2,000万円以下という要件に加え、床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅の場合は、合計所得金額が1,000万円以下であることが求められるようになりました。これは、これまで原則50㎡以上が必要だった床面積要件が、一定の要件(主に建築確認を受けた建物であること)を満たせば40㎡以上でも適用可能になったこととセットで見直されたものです。
また、住宅の種類(ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅など)に応じた借入限度額や控除期間も、2024年以降の居住開始分から段階的に変更されています。
Q2: フリーランスの場合、この所得要件変更は確定申告にどう影響しますか?
A2: フリーランスの方の場合、確定申告では事業所得や不動産所得など、給与所得以外の様々な所得を申告します。住宅ローン控除の適用で参照される「合計所得金額」は、これらの各種所得の合計額(赤字があれば相殺)を指します。
今回の改正で、床面積40㎡以上50㎡未満の住宅を取得して2024年以降に居住を開始した場合、合計所得金額が1,000万円を超えると住宅ローン控除の適用を受けられなくなります。これまでの2,000万円以下という要件に比べて、対象となる所得水準が引き下げられたことになります。
事業所得は年によって変動することがありますので、特に床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅を取得・居住予定の方は、確定申告を行う年の合計所得金額が1,000万円を超える見込みがないか、事前に確認することが重要になります。合計所得金額が2,000万円を超える場合も、これまで通り住宅ローン控除の適用は受けられません。
Q3: 自宅兼事務所の場合、住宅ローン控除の計算はどうなりますか?改正点は影響しますか?
A3: フリーランスの方が自宅の一部を事務所として使用している場合、住宅ローン控除の対象となるのは、家屋全体の床面積のうち、居住用部分として使用している割合に応じた部分のみとなります。これを家事按分といいます。
例えば、全体の床面積のうち50%を事務所として使用し、50%を居住用として使用している場合、住宅ローン控除の対象となる借入金は、家屋全体の借入金残高の50%に限定されます。確定申告では、この居住用割合を適切に計算し、申告書に記載する必要があります。
2024年の税制改正による住宅ローン控除の変更点(所得要件など)は、この家事按分計算の方法そのものに直接影響を与えるものではありません。しかし、家事按分後の居住用部分の面積が住宅ローン控除の適用を受けるための床面積要件(原則50㎡以上、要件を満たせば40㎡以上)を満たしているか、そして全体の合計所得金額が改正後の所得要件(2,000万円以下、40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)を満たしているか、といった点を確認する必要があります。
Q4: 2024年以降に住宅を取得した場合の注意点は?
A4: 2024年以降に住宅を取得して居住を開始する場合、確定申告で住宅ローン控除の適用を受けるためには、改正後の要件を満たしているかを特に確認する必要があります。
- 所得要件: 確定申告を行う年の合計所得金額が2,000万円以下であること。特に床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、合計所得金額が1,000万円以下であること。
- 床面積要件: 家屋の床面積が50㎡以上であること。ただし、2024年中に建築確認を受けた新築住宅の場合、床面積が40㎡以上50㎡未満でも、合計所得金額が1,000万円以下であれば適用可能です。
- その他の要件: 住宅ローンの返済期間が10年以上であること、取得した住宅が一定の耐震基準を満たすこと、自己の居住の用に供することなど、改正前から引き続き適用される要件も満たす必要があります。
確定申告の際には、これらの要件を満たすことを証明する書類(金融機関からの住宅ローン残高証明書、登記事項証明書、売買契約書または建築請負契約書、住民票など)を準備し、適切に申告書を作成することが求められます。
Q5: すでに住宅ローン控除を受けていますが、2024年の改正は影響しますか?
A5: 住宅ローン控除は、基本的に住宅に居住を開始した年(適用初年)の税法に基づいて適用されます。したがって、2023年以前に住宅を取得して居住を開始し、すでに住宅ローン控除の適用を受けている方については、2024年の税制改正による主な変更点(所得要件や借入限度額など)は、原則としてその後の控除期間に直接影響しないと考えられます。適用初年に定められた控除額の計算方法や控除期間がそのまま継続されることが一般的です。
ただし、既存の住宅ローン控除の適用者が増改築やリフォームを行い、新たに住宅ローンを組んでその控除を申請する場合など、状況によっては改正後の税法が適用される可能性もございます。
ご自身の適用年や個別の状況についてご不明な点がある場合は、税務署や専門家にご確認いただくことをお勧めいたします。
まとめ
この記事では、2024年の税制改正における住宅ローン控除の主な変更点と、フリーランスの皆様の確定申告への影響について解説いたしました。
特に、2024年以降に住宅を取得して居住を開始する場合の所得要件や床面積要件には注意が必要です。ご自身の合計所得金額や、住宅を取得された時期、住宅の種類によって適用される要件が異なりますので、確定申告の際にはご自身の状況をよくご確認いただくことが重要です。
確定申告の準備を進めるにあたり、改正点の正確な理解は誤りのない申告のために不可欠です。複雑なケースや個別の事情については、税務署や税理士といった専門家にご相談されることをお勧めいたします。