2024年税制改正:新しいNISAはフリーランスの確定申告にどう影響?Q&A
2024年から新しいNISA制度が始まりました。これは個人の資産形成を支援するための非課税制度ですが、フリーランスとしてご自身で確定申告をされている方の中には、「NISAで運用した利益は確定申告に関係するのだろうか?」「何か申告書に書く必要があるのか?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
このサイトは、2024年の税制改正に関する疑問をQ&A形式で解決することを目指しています。この記事では、新しいNISA制度がフリーランスの確定申告にどのような影響を与えるのか、具体的な疑問にお答えします。税法に基づいた正確な情報を提供し、皆様の確定申告に対する不安を軽減できるよう構成しています。
Q&Aでわかる新しいNISAとフリーランスの確定申告
新しいNISA制度は、投資から得られる利益に対する税金に関する制度です。フリーランスの皆様が確定申告を行う際に知っておくべきポイントを、Q&A形式で見ていきましょう。
Q1:そもそも新しいNISA制度とは何ですか?
A1: 新しいNISA制度は、株式や投資信託などの金融商品から得られる売却益や分配金・配当金にかかる税金(通常20.315%)が非課税になる制度です。これは、より多くの方が安心して資産形成に取り組めるよう、従来のNISA制度が見直され、2024年1月から開始されました。
新しいNISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの投資枠が設けられ、それぞれの年間投資上限額や非課税で保有できる生涯投資上限額が大きく拡充されました。これにより、より長期にわたって、より大きな金額を非課税で投資できるようになりました。
Q2:フリーランスが新しいNISAで運用した場合、確定申告は必要ですか?
A2: 原則として、新しいNISA口座内で得た利益については、所得税や住民税が非課税となるため、確定申告は不要です。
NISA制度は、税金がかからない(非課税)ことを目的とした制度です。そのため、NISA口座を通じて得た利益は、事業所得や給与所得など、他の所得とは分けて取り扱われ、所得税の計算には含められません。確定申告は、課税される所得を計算し、それに対する税額を申告・納税するための手続きですので、非課税所得であるNISAの利益について申告する必要はありません。
ただし、これはNISA口座内で適切に運用されている場合に限ります。非課税投資枠の上限を超えて投資した場合や、NISA口座以外(特定口座や一般口座など)で投資した場合の利益については、通常通り課税対象となり、原則として確定申告が必要になる場合があります(源泉徴収あり特定口座の場合は申告不要を選択できます)。
Q3:NISA口座で得た利益は、事業所得や他の所得と合算されますか?
A3: いいえ、新しいNISA口座で得た利益は、事業所得やその他の所得(例えば、給与所得、不動産所得、雑所得など)とは合算されません。
確定申告では、様々な種類の所得を合算して「総所得金額」を計算し、所得控除を差し引いて課税所得金額を算出するのが基本的な流れです。しかし、NISAによる利益は「非課税所得」として扱われるため、最初から所得税の計算対象外とされています。事業所得や他の所得の金額に影響を与えることはありません。
Q4:NISA口座を通じて損失が出た場合、他の所得との損益通算や繰越控除はできますか?
A4: いいえ、NISA口座内で発生した損失について、他の所得(事業所得など)との損益通算はできませんし、翌年以降に繰越控除することもできません。
これは、NISA口座で得た利益が非課税であることの裏返しとして設けられているルールです。税金がかからない利益に対する損失なので、税務上の優遇措置(損益通算や繰越控除)は適用されないという考え方に基づいています。もしNISA口座で損失が発生しても、その損失を確定申告で利用して、事業所得など他の所得から差し引いて税負担を軽減することはできませんのでご注意ください。
Q5:確定申告書にNISAに関する特別な記載は必要ですか?
A5: NISA口座内で得た非課税の利益については、原則として確定申告書に特別な記載をする必要はありません。
確定申告書は課税対象となる所得について記載するものだからです。NISA口座で運用していることや、そこで得た非課税の利益について、確定申告書のどこかに記載を求められることは通常ありません。
ただし、税務署から問い合わせがあった場合に備え、取引内容やNISA口座を利用している事実を証明できる書類(取引報告書など)は保管しておくことが推奨されます。
Q6:NISAの年間投資枠や非課税保有限度額を超えて投資した場合、どうなりますか?
A6: 新しいNISAには、年間投資枠(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、合計最大360万円)と、非課税で保有できる生涯投資上限額(1,800万円、うち成長投資枠は1,200万円)が設定されています。これらの枠を超えて投資した場合、超えた部分についてはNISA口座ではなく、通常の課税口座(特定口座や一般口座)での投資として扱われます。
課税口座での投資で得た利益(売却益や配当金・分配金)は、通常通り所得税・住民税の課税対象となります。これらの利益については、原則として確定申告が必要となりますので注意が必要です。特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、金融機関が税金を徴収してくれるため原則申告不要ですが、損失が出た場合や他の所得と合算したい場合などは確定申告を行うことになります。
Q7:過去のNISA(つみたてNISA、一般NISA)からの移行はどうなりますか?
A7: 2023年末までの旧NISA制度(一般NISA・つみたてNISA)で投資した資産は、新しいNISA制度の非課税保有限度額(1,800万円)とは別枠で、それぞれの旧制度における非課税期間が終了するまで非課税で保有できます。新しいNISA制度へのロールオーバー(資産の移管)はできません。
旧NISA口座で運用していた資産を売却した場合の利益も、それぞれの非課税期間内であれば非課税であり、確定申告は不要です。ただし、非課税期間終了後に課税口座に移管した場合や、移管後に売却した場合に発生した利益は課税対象となり、確定申告が必要になる場合があります。
まとめ
2024年から始まった新しいNISA制度は、個人の資産形成を力強く後押しする制度ですが、フリーランスの皆様が所得税の確定申告を行う上では、基本的に直接的な影響はありません。NISA口座内で得た利益は非課税であり、他の所得と合算する必要も、確定申告書に記載する必要も原則としてないからです。
ただし、非課税投資枠を超えた投資や、NISA口座以外での取引については課税対象となり、確定申告が必要になる場合があります。また、NISA口座での損失は他の所得との損益通算ができない点も重要な注意点です。
新しいNISAは確定申告とは切り離して考えられる非課税制度として、フリーランスの皆様の資産形成の選択肢の一つとなり得ます。確定申告においては、ご自身の事業所得や経費計算、各種控除などに正しく向き合うことが引き続き重要です。税務に関する不明点がある場合は、税務署や税理士といった専門家にご相談いただくこともご検討ください。