Q&Aでわかる2024税制改正

2024年確定申告:フリーランスの青色事業専従者給与Q&A

Tags: 青色事業専従者給与, フリーランス, 確定申告, 所得税, 個人事業主, 経費

「Q&Aでわかる2024税制改正」へようこそ。この記事では、個人事業主であるフリーランスの皆様が、ご家族に支払う給与を必要経費とするための「青色事業専従者給与」について、2024年の確定申告に向けて知っておきたい基本的な事項や適用上の注意点をQ&A形式で解説します。

青色申告を行っているフリーランスの方にとって、生計を一にする配偶者や親族に支払った給与を必要経費として計上できる青色事業専従者給与は、所得税や住民税の負担を軽減する有効な手段の一つです。正確な申告のために、制度の概要や適用要件、手続き方法などを確認しておきましょう。

Q1:青色事業専従者給与とは何ですか?誰に支払えますか?

A1: 青色事業専従者給与とは、青色申告を行っている個人事業主が、生計を一にする配偶者やその他の親族(15歳未満の親族を除く)に支払った給与のうち、一定の要件を満たすものを事業の必要経費として計上できる制度です。

適用するためには、以下の要件を全て満たす必要があります。

  1. 青色申告者であること: 確定申告を青色申告で行っていることが前提です。
  2. 生計を一にする親族であること: 原則として、同じ家計で生活している配偶者や親族である必要があります。
  3. 年齢要件: その年の12月31日現在で15歳以上の親族である必要があります。
  4. 専従要件: その年を通じて6ヶ月を超える期間、事業主の営む事業に専ら従事している必要があります。ただし、事業に専ら従事できる期間が事業年度の途中で廃業した場合などは、その期間に応じて判断されます。

これらの要件を満たす家族が、事業を手伝ってくれている場合に、支払った給与を経費とすることができます。

Q2:青色事業専従者給与を支払うには、どのような手続きが必要ですか?

A2: 青色事業専従者給与を必要経費とするためには、事前に税務署へ「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。

この届出書には、専従者となる親族の氏名、給与の金額、給与の計算方法、仕事の内容などを記載します。提出期限は、原則として、青色事業専従者給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日までです。その年の1月16日以後に開業した場合や、新たに専従者となった親族がいる場合は、その開業等の日から2ヶ月以内に提出する必要があります。

この届出書を提出しないと、たとえ家族に給与を支払っていても、青色事業専従者給与として必要経費に算入することはできません。支払った給与は単なる家族への仕送り等とみなされ、事業の経費とは認められないため、税務上のメリットを受けることができなくなりますので、ご注意ください。

Q3:支払う給与の金額に上限はありますか?適正な金額とは?

A3: 青色事業専従者給与として認められる金額は、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した金額の範囲内で、かつ、労務の内容(仕事の内容や時間、責任の度合いなど)に比較して適正であると認められる金額です。

税法上、金額の上限は明確に定められていませんが、極端に高額な給与は税務署によって否認される可能性があります。適正であるかどうかの判断は、以下の要素が考慮されることが多いです。

つまり、単に節税目的で高額な給与を支払うのではなく、実際にその家族が行っている仕事に見合った妥当な金額である必要があります。金額の決定にあたっては、これらの点を考慮し、客観的に説明できる根拠を持つことが重要です。

Q4:青色事業専従者給与を支払うと、家族は扶養から外れますか?

A4: はい、青色事業専従者給与の適用を受ける場合、その専従者は、事業主であるあなたの所得税における控除対象配偶者や控除対象扶養親族にはなれません。

これは、専従者給与を受け取ることで、その親族が事業の専従者として独立した所得を得ているとみなされるためです。したがって、これまで配偶者控除や扶養控除の適用を受けていた親族に青色事業専従者給与を支払う場合は、これらの扶養控除が受けられなくなります。

どちらが得かは、支払う専従者給与の金額、親族の年齢(扶養控除額の違い)、事業主の所得金額などによって異なります。専従者給与を支払うことによる事業主の所得税・住民税の軽減効果と、扶養控除がなくなることによる税負担の増加、さらに家族側の所得税・住民税や社会保険料の負担増減を総合的に比較検討する必要があります。

Q5:支払った専従者給与の会計処理・記帳方法を教えてください。

A5: 青色事業専従者給与は、事業の「給料賃金」などの勘定科目を使って経費として計上します。発生主義に基づき、実際に支払った金額をその年の経費とします。

また、個人事業主は、専従者給与を支払う際に、所得税の源泉徴収義務が生じます。給与から所得税を差し引き、原則として支払った月の翌月10日までに税務署に納付する必要があります。年末には専従者の年末調整を行うか、専従者自身が確定申告を行うことになります。

記帳としては、例えば給与10万円を普通預金から支払った場合、以下のようになります。

(借方)給料賃金 100,000 /(貸方)普通預金 100,000

源泉徴収税額がある場合は、以下のような処理も必要になります。(源泉所得税額1,000円の場合)

(借方)給料賃金 100,000 /(貸方)普通預金 99,000 (貸方)預り金(源泉所得税) 1,000

源泉徴収税額を納付した際には、預り金の勘定科目を取り崩します。

(借方)預り金 1,000 /(貸方)普通預金 1,000

こうした源泉徴収や年末調整の手続きも伴いますので、会計処理には注意が必要です。

Q6:2024年の税制改正で、青色事業専従者給与に関する変更点はありますか?

A6: 2024年の税制改正において、青色事業専従者給与の制度自体に大きな変更点は見られません。適用要件や届出、金額の算定方法に関する基本的な考え方は従前どおりです。

しかしながら、フリーランスを取り巻く税務環境は、インボイス制度の開始など、近年大きく変化しています。正確な所得計算と適切な経費計上は、これまで以上に重要になっています。青色事業専従者給与は、事業所得の計算に直接影響する重要な経費項目ですので、制度の基本ルールを今一度確認し、適切に適用することが、2024年分の確定申告を行う上で引き続き重要となります。

まとめ

青色事業専従者給与は、青色申告を行うフリーランスが、生計を一にするご家族に支払う給与を必要経費にできる制度です。適用には事前の届出や一定の要件を満たす必要があり、支払う給与の金額も適正である必要があります。また、この制度を適用すると、その家族は扶養控除の対象から外れますので、総合的な税負担を考慮して判断することが大切です。

2024年の税制改正で青色事業専従者給与の制度自体に大きな変更はありませんが、正確な経費計上は確定申告の基本です。本記事が、皆様の確定申告のご準備の一助となれば幸いです。ご自身の状況に合わせて、制度内容を十分にご理解いただき、正確な申告を心がけてください。