2024年税制改正:フリーランス向け クレジットカード経費の記帳と税務Q&A
フリーランスにとって、日々の事業活動でクレジットカードを利用する機会は多いものです。決済がスムーズである一方、経費計上や記帳、そして保存に関する税務上のルールは正確に理解しておく必要があります。特に、2024年からは電子帳簿保存法への対応も本格化し、クレジットカードの利用明細の取り扱いも確認が求められます。
この記事では、フリーランスの皆さまがクレジットカード利用に関して抱きがちな疑問点をQ&A形式で解説し、適切な経費処理と記帳方法についてお伝えします。正確な確定申告のために、ぜひ内容をご確認ください。
Q1. 事業用のクレジットカードで支払った経費は、いつの経費として計上すれば良いですか?
A1. 事業用のクレジットカードで支払った経費を計上するタイミングには、主に「クレジットカード決済日」と「銀行口座からの引き落とし日」の2つの考え方があります。
税法上は、原則として経費が発生した日(サービスを受けた日や商品を受け取った日など)に計上するのが適切ですが、クレジットカード払いの場合、実務上は決済日基準か引き落とし日基準のいずれかで継続して処理することが認められています。
多くのフリーランスの方にとっては、クレジットカードの利用明細で確認できる「クレジットカード決済日」を基準とする方法が、実際の支出と紐づけやすく、記帳の手間も少ないため一般的です。この場合、決済日には「未払金」などの勘定科目を使用し、後日銀行口座から引き落とされた際に未払金を消し込むという流れになります。
どちらの方法を採用するにしても、一度決めた基準は毎期継続して適用することが重要です。
Q2. クレジットカードで支払った経費を記帳する際の勘定科目はどうなりますか?
A2. クレジットカードで支払った支出の内容に応じて、適切な勘定科目を適用します。例えば、事務用品の購入であれば「消耗品費」、サーバー代やドメイン代であれば「通信費」、書籍の購入であれば「新聞図書費」などです。
記帳の際は、一般的に以下のように仕訳を行います(決済日基準の場合)。
- カード利用時(決済日): (借方)消耗品費 〇〇円 / (貸方)未払金 〇〇円 (摘要)事務用品購入 △△カード利用
- 銀行口座からの引き落とし時: (借方)未払金 〇〇円 / (貸方)普通預金 〇〇円 (摘要)△△カード引落分
事業用のクレジットカードを利用することで、事業に関する支出が明確になり、記帳も整理しやすくなります。
Q3. プライベートと兼用しているクレジットカードの場合、どのように経費を処理すれば良いですか?
A3. プライベートと兼用しているクレジットカードの場合、利用明細の中から事業に関連する支出のみを区別して経費として計上する必要があります。
例えば、クレジットカードの引き落とし口座を事業用と兼用している場合、引き落とし日にはカード利用額全体が引き落とされますが、その中に事業とは無関係なプライベートな支出が含まれているはずです。この場合、事業に関わる支出は「経費科目」として、プライベートな支出は「事業主貸」として処理します。
- カード利用時(決済日): 事業に関連する支出は Q2 と同様に処理します。 プライベートな支出は原則として仕訳不要ですが、必要に応じてメモを残しておくと整理しやすいです。
- 銀行口座からの引き落とし時: 例えば、カード利用額合計10万円のうち、事業用が7万円、プライベート用が3万円だった場合。 (借方)未払金 70,000円 / (貸方)普通預金 100,000円 (借方)事業主貸 30,000円 (摘要)△△カード引落分(うち事業用7万円)
このように、兼用カードの場合は事業利用分とプライベート利用分を正確に区分することが非常に重要です。家事按分が必要な経費(通信費など)についても、事業での使用割合に応じた金額のみを経費に計上し、残りは事業主貸として処理します。
Q4. クレジットカードの利用明細や領収書は、電子帳簿保存法への対応としてどのように保存すれば良いですか?
A4. 2024年1月1日以降、電子的に受け取った取引情報(電子取引データ)は、原則として電子データのまま保存することが義務付けられています。クレジットカードの利用明細がPDFファイルなどの電子データとして提供される場合、これは電子取引データに該当します。
したがって、クレジットカード会社から電子的に提供される利用明細は、プリントアウトして紙で保存するのではなく、電子データのまま以下の要件を満たして保存する必要があります。
- 真実性の確保:
- タイムスタンプを付与した上で保存
- 履歴が残るシステムでの授受・保存
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用
- (これらのうちいずれかの措置)
- 可視性の確保:
- すぐに確認できる状態で保存(PCやディスプレイ、プリンタの備え付け)
- 検索要件(取引年月日、取引金額、取引先で検索できることなど)を満たす
なお、基準期間の売上高が5,000万円以下である方などについては、検索要件の一部を満たす必要がないといった緩和措置もあります。
また、クレジットカードで支払った際に別途受け取った紙の領収書は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たしてデータ保存することも、これまで通り紙のまま保存することも可能です。
自身の状況に合わせて、適切な方法でクレジットカード関連の書類を保存することが、税務調査などへの対応において重要となります。
Q5. クレジットカードで貯めたポイントやマイルを事業に関連する支払いに充てた場合、税務上の扱いはどうなりますか?
A5. クレジットカード利用で付与されたポイントやマイルは、原則として経済的利益として所得税の課税対象とはなりません。これは、これらのポイント等がクレジットカード会社から提供される「値引き」や「サービス」とみなされるためです。
このポイントやマイルを事業に関連する支払いに充てた場合、その支払額はポイント等の利用分を差し引いた金額で経費計上するのが一般的です。例えば、1万円の物品をクレジットカードで支払い、うち1,000円分をポイントで充当した場合、経費計上額は9,000円となります。
これは、税法上の「値引き」に相当すると考えられるためです。
Q6. 事業用のクレジットカードの年会費は経費にできますか?
A6. はい、事業の遂行のために使用しているクレジットカードの年会費は、原則として経費として計上できます。勘定科目は「支払い手数料」や「諸会費」などが考えられます。
ただし、Q3で触れたように、プライベートと兼用しているクレジットカードの年会費については、事業での使用割合に応じて按分し、事業に関連する部分のみを経費とすることが適切です。按分方法は、事業で使用した金額の割合や利用件数の割合など、合理的な基準を継続して適用します。
クレジットカードの経費処理と記帳は、日々の事業活動と密接に関わるため、正確な知識を持つことが確定申告の際にも役立ちます。特に電子帳簿保存法への対応については、ご自身のデータ保存方法を見直す良い機会となるでしょう。不明な点については、税理士などの専門家にご相談されることをお勧めします。