2024年確定申告:フリーランスの「その他の収入」、記帳と所得区分はどうする?Q&A
フリーランスとして活動されている方の中には、本業で得られる事業所得の他に、アフィリエイト収入やフリマアプリでの売上、一時的なアルバイト収入など、様々な形で「その他の収入」を得ている方もいらっしゃるかと思います。2024年に行う確定申告(令和5年分の申告)では、こうした「その他の収入」に関する税務ルールに重要な変更点があり、ご自身の申告に影響する可能性があります。
この記事では、フリーランスの皆様が特に知っておくべき「その他の収入」に関する記帳義務化や所得区分の変更点について、Q&A形式で分かりやすく解説します。
Q1: 2024年の確定申告から、「その他の収入」(雑所得など)に関するルールで特に変わった点は何ですか?
A1:
2024年に行う確定申告は、令和5年分の所得を対象とします。この令和5年分の所得税から、業務に係る雑所得がある方に影響する主な変更点として、以下の2つが挙げられます。
- 一定金額を超える業務に係る雑所得がある場合の記帳・帳簿保存義務化
- 事業所得と雑所得の区分に関する判断基準の明確化
これらの変更点は、特に副業などで一定以上の収入があるフリーランスの方の確定申告に直接的な影響を与える可能性があります。
Q2: 雑所得が一定金額を超える場合の記帳・帳簿保存義務について、もう少し詳しく教えてください。
A2:
この義務化は、業務に係る雑所得(副業など、営利目的で継続的に行う活動から生じる雑所得)があり、その前々年の収入金額が300万円を超える方に適用されます。
該当する方は、現金預金取引等に係るものについて、取引年月日、相手方の氏名又は名称、金額、勘定科目などを記載した書類(法定帳簿)を保存する義務が生じます。これは、事業所得における記帳・帳簿保存義務に準ずるものです。具体的には、収入や支出について、いつ、誰と、いくら取引したのか、何に使ったのか、といった内容を正確に記録し、その記録を保存する必要があります。
この変更は、令和4年分からの適用ですが、影響を受けるのは令和5年分の申告からです。
Q3: 300万円以下の場合は記帳しなくていいのですか?
A3:
いいえ、300万円以下であっても、業務に係る雑所得については、収入金額や必要経費を正確に計算するために、収入と支出を記録しておくことが引き続き推奨されます。
今回の改正で新たに義務化されたのは、前々年の収入が300万円を超える場合の「法定帳簿の保存」です。しかし、正確な所得金額を計算し、適正な確定申告を行うためには、収入や経費に関する記録は必要不可欠です。収支内訳書を作成するための簡易な記録であっても、ご自身の収入と支出を把握し、必要経費を漏れなく計上するために役立ちます。
Q4: 事業所得と雑所得の区分に関する判断基準が明確化されたとのことですが、これはどういうことですか?
A4:
これまで、副業などから生じる所得が事業所得になるのか雑所得になるのかの区分は、個別の実態に基づいて判断されていましたが、解釈に迷うケースもありました。
国税庁は、令和4年分以降の所得税の確定申告から適用される、事業所得と認められるかの判断に関する考え方を公表しました。それによれば、その所得を得る活動が「営利性・有償性」を有し、かつ「継続性・反復性」を有しているかどうかを基本とし、社会通念上事業と認められるかどうかを総合的に判断することになります。
特に重要な点として、帳簿書類の保存の有無が判断要素の一つとして明記されました。例えば、収入金額が少なくても、その実態が事業として客観的に認められる場合は事業所得となる可能性があります。一方で、その所得が主たる所得に対する従たる所得であり、かつ、その所得に係る収入金額が300万円以下で、記帳・帳簿保存がない場合は、原則として雑所得に該当する、といった考え方も示されています。ただし、これも最終的には個別の実態に基づく総合判断となります。
Q5: 私はWebデザイナーとして事業所得で申告していますが、アフィリエイト収入もあります。このアフィリエイト収入は事業所得になりますか、それとも雑所得になりますか?
A5:
ご自身のWebデザイン業が事業所得として認められているとして、アフィリエイト収入がどちらになるかは、そのアフィリエイト活動の実態によります。
上記の判断基準(営利性・有償性、継続性・反復性、記帳の有無など)を総合的に考慮して判断が必要です。例えば、Webデザイン関連の専門知識を活かしたブログで、継続的にアフィリエイト収入を得ており、その活動に時間や労力をかけ、収入金額も一定規模あり、事業として適切に記帳を行っている場合は、アフィリエイト収入もWebデザイン業と合わせて事業所得と認められる可能性があります。
一方、個人的な趣味のブログに少し掲載しているだけで、収入も少額かつ一時的である場合や、事業として管理・記帳をしていない場合は、一般的には雑所得となることが多いでしょう。ご自身の活動がどちらに該当するか、実態に基づいて慎重に判断することが重要です。
Q6: もしその他の収入も事業所得と判断された場合、何かメリットはありますか?
A6:
その他の収入も事業所得として認められる場合の大きなメリットは、所得全体を事業所得として申告することで、青色申告特別控除(最大65万円または10万円)の適用対象となることです(事前に青色申告承認申請書の提出が必要)。また、事業所得で赤字が生じた場合、その赤字を翌年以降に繰り越して、将来の所得から差し引くことができる純損失の繰越しといった特典も利用できます。
ただし、青色申告でこれらの特典を受けるためには、正規の簿記(複式簿記など)による記帳を行い、帳簿を保存するなど、一定の要件を満たす必要があります。また、事業所得としての記帳・管理の手間は増える可能性があります。
Q7: 雑所得として申告する場合、記帳や収支内訳書の添付は必要ですか?
A7:
雑所得として申告する場合、原則として確定申告書に収支内訳書を添付する義務はありません(事業所得や不動産所得の場合は原則必要です)。
しかし、必要経費を計上して所得金額を計算するためには、収入と支出に関する記録は必要です。また、Q2で説明したように、前々年の業務に係る雑所得等の収入が300万円を超える場合は、現金預金取引等に係る法定帳簿の保存義務が生じます。300万円以下の場合でも、確定申告で正確な所得金額を申告するためには、収入や経費を記録したものを保管しておくことが重要です。
Q8: 複数の種類の「その他の収入」がある場合、まとめて雑所得として申告できますか?
A8:
はい、一般的に、副業などで得られる業務に係る雑所得や、それ以外の雑所得(例えば、原稿料や講演料、ネットオークションやフリマアプリによる所得で営利を目的とした継続的活動によらないものなど)は、所得税の計算上、まとめて雑所得として申告します。
ただし、収入の種類ごとに収入金額や必要経費を計算し、それぞれの所得金額を明らかにする必要があります。最終的な雑所得の金額は、それぞれの雑所得の合計額となります。また、それぞれの収入が事業所得に該当するかどうかは、上記の基準に基づいて個別に判断が必要です。
Q9: 確定申告の際に特に注意すべき点は何ですか?
A9:
最も重要なのは、ご自身の「その他の収入」が、税法上の事業所得と雑所得のどちらに該当するかを、実態に基づいて正確に判断することです。今回の基準明確化を踏まえ、これまで曖昧だった副業収入などについて、ご自身の活動内容を改めて確認する必要があります。
また、業務に係る雑所得が前々年で300万円を超えている場合は、令和5年分の確定申告に向けて現金預金取引等の法定帳簿の保存義務が発生しているため、適切な記帳と帳簿の保存ができているかを確認してください。
判断に迷う場合や、ご自身のケースが複雑な場合は、税務署の相談窓口や税理士などの専門家に相談することも検討し、適正な確定申告を行うようにしましょう。
終わりに
2024年の確定申告では、フリーランスの皆様にとって、「その他の収入」に関するルール変更が影響を与える可能性があります。ご自身の収入の種類を正しく把握し、必要な記帳や証拠書類の準備を進めることが、スムーズな確定申告と適正な納税につながります。変更点をしっかりと理解し、計画的に準備を進めていきましょう。