2024年確定申告:生命保険料控除・地震保険料控除の適用Q&A(フリーランス向け)
2024年の確定申告に向けた生命保険料控除・地震保険料控除のポイント
確定申告を行う際、所得税額を計算する上で重要な役割を果たすのが所得控除です。所得控除を適切に申告することで、課税される所得金額が減少し、結果として税負担を軽減することができます。
今回は、フリーランスの皆様も適用を受ける可能性のある生命保険料控除と地震保険料控除について、2024年の確定申告(令和6年分の所得税)に向けた適用要件や計算方法、手続きに関する疑問点をQ&A形式で分かりやすく解説します。これらの控除を正しく理解し、確定申告にご活用ください。
Q1. 生命保険料控除とはどのような制度ですか?フリーランスでも適用できますか?
A1. 生命保険料控除は、所得税法に定められた所得控除の一つで、納税者が生命保険契約等の保険料を支払った場合に、その支払った保険料に応じて一定の金額を所得から差し引くことができる制度です。これは、将来への備えである生命保険等への加入を促進するための国の施策と言えます。
この控除は、所得の種類や職業に関わらず、所得税の納税義務がある方であれば適用を受けることができます。したがって、事業所得などを主な収入とするフリーランスの方でも、生命保険契約等の保険料を支払っている場合には、適用要件を満たせば生命保険料控除を適用することが可能です。
控除の適用には、ご自身が保険料を支払っていること、そしてその保険契約が控除の対象となる種類であることなどが要件となります。
Q2. 生命保険料控除の対象となる保険の種類を教えてください。
A2. 生命保険料控除の対象となるのは、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3つの区分に該当する保険契約です。
- 一般生命保険料: 被保険者の生死に関して保険金が支払われる生命保険や、学資保険、養老保険などが該当します。ただし、保険期間が5年未満の貯蓄型の生命保険などは対象外となる場合があります。
- 介護医療保険料: 入院・通院などによる医療費や、身体上の障害に対応するための保険金が支払われる医療保険や介護保険などが該当します。給付事由が疾病や身体の傷害に基因するものなどが対象です。
- 個人年金保険料: 将来年金として給付を受けることを目的とした契約で、所定の要件(年金の支払期間、契約者の年齢など)を満たす個人年金保険が該当します。この区分で控除を受けるためには、「個人年金保険料税制適格特約」が付加されていることが一般的です。
これらの区分ごとに保険料を計算し、それぞれの区分で控除額を計算します。
Q3. 生命保険料控除の控除額はどのように計算しますか?
A3. 生命保険料控除の控除額は、契約が「新制度」と「旧制度」のどちらに該当するか、そして支払った保険料の金額によって計算方法が異なります。多くの契約は平成24年1月1日以後に締結された「新制度」の契約に該当しますが、それ以前に締結された契約は「旧制度」となります。
新制度の場合: 一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の各区分ごとに、その年に支払った保険料等の金額に基づき、以下の計算式で控除額を算出します。
- 年間の支払保険料等が20,000円以下:支払保険料等の全額
- 年間の支払保険料等が20,000円超 40,000円以下:支払保険料等 × 1/2 + 10,000円
- 年間の支払保険料等が40,000円超 80,000円以下:支払保険料等 × 1/4 + 20,000円
- 年間の支払保険料等が80,000円超:一律 40,000円
各区分で計算した控除額の合計額が、生命保険料控除の控除額となります。ただし、合計額の上限は120,000円です。
旧制度の場合: 一般生命保険料と個人年金保険料の各区分ごとに計算します。(介護医療保険料の区分はありません。)
- 年間の支払保険料等が25,000円以下:支払保険料等の全額
- 年間の支払保険料等が25,000円超 50,000円以下:支払保険料等 × 1/2 + 12,500円
- 年間の支払保険料等が50,000円超 100,000円以下:支払保険料等 × 1/4 + 25,000円
- 年間の支払保険料等が100,000円超:一律 50,000円
各区分で計算した控除額の合計額が、旧制度の生命保険料控除額となります。合計額の上限は100,000円です。
新制度と旧制度の両方の契約がある場合は、それぞれの計算方法で求めた控除額を合算することができますが、全体の上限は120,000円となります。また、旧制度の一般生命保険料または個人年金保険料については、新制度の計算方法で計算することも可能で、有利な方を選択できます。具体的な計算方法は、保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」に記載されていますのでご確認ください。
Q4. 地震保険料控除とは何ですか?適用要件を教えてください。
A4. 地震保険料控除は、納税者が特定の損害保険契約等にかかる地震等損害部分の保険料を支払った場合に、その支払った金額に応じて一定の金額を所得から差し引くことができる制度です。これは、地震等による損害の補償に係る保険への加入を促進するための制度です。
適用要件は以下の通りです。
- 納税者本人が保険料を支払っていること。
- 対象となる保険契約が、地震保険法に規定する地震保険契約であること。
- 保険の対象となっている家屋または家財が、納税者本人、または本人と生計を一にする配偶者やその他の親族が所有し、常時居住の用に供する家屋等であること。フリーランスの場合、自宅兼事務所であっても、居住部分にかかる保険料であれば対象となり得ます。
旧制度における長期損害保険契約等に関する経過措置もありますが、多くの場合は地震保険契約が対象となります。
Q5. 地震保険料控除の控除額はいくらですか?
A5. 地震保険料控除の控除額は、その年に支払った地震保険料の金額によって計算されます。
年間の支払保険料等の金額(地震等損害部分)が50,000円以下の場合、支払保険料等の全額が控除の対象となります。
年間の支払保険料等の金額(地震等損害部分)が50,000円を超える場合、控除額は一律 50,000円が上限となります。
例えば、年間の支払保険料が30,000円であれば控除額は30,000円、年間の支払保険料が60,000円であれば控除額は50,000円となります。
旧制度の長期損害保険契約に関する経過措置が適用される場合や、地震保険契約と長期損害保険契約の両方がある場合は、計算方法が異なりますので、詳細は国税庁のウェブサイトなどでご確認ください。通常は、保険会社から送付される「地震保険料控除証明書」に控除対象となる支払金額が記載されていますので、そちらを参考にしてください。
Q6. 生命保険料控除・地震保険料控除を受けるための確定申告での手続きは?
A6. これらの控除を受けるためには、確定申告書に必要事項を記載し、「生命保険料控除証明書」および「地震保険料控除証明書」を添付または提示する必要があります。
- 控除証明書の準備: 保険会社は、毎年10月頃から1月頃にかけて、その年の1月1日から12月31日までに支払った保険料に関する控除証明書を契約者へ送付します。確定申告にはこの証明書が必要ですので、大切に保管してください。証明書が届かない場合は、保険会社に連絡して再発行を依頼する必要があります。
- 確定申告書の記載: 確定申告書には、生命保険料控除および地震保険料控除の記載欄があります。控除証明書に記載された区分ごとの支払保険料や控除額を確認し、正しく記載します。 e-Tax(電子申告)を利用する場合、証明書に記載された情報を入力することで申告できます。
- 証明書の提出または提示: 確定申告書を提出する際に、控除証明書を添付します。e-Taxで申告する場合、原則として証明書の添付は不要ですが、税務署から提示または提出を求められる場合がありますので、法定申告期限から7年間は保管しておく必要があります。郵送や窓口で申告する場合は、証明書の原本を確定申告書に添付して提出します。
Q7. 複数契約している場合の控除はどうなりますか?
A7. 生命保険契約や地震保険契約を複数契約している場合でも、それぞれの保険料について控除を適用できますが、いくつかのルールがあります。
- 生命保険料控除: 同じ区分(一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料)に該当する複数の保険契約がある場合、それぞれの契約で支払った保険料を合算して、区分ごとの控除額を計算します。そして、各区分の控除額を合計した金額が生命保険料控除額となりますが、新制度の場合は合計で120,000円、旧制度の場合は合計で100,000円が上限となります。新制度と旧制度の両方がある場合の合計上限は120,000円です。
- 地震保険料控除: 複数の地震保険契約がある場合、支払った地震保険料の合計額に対して控除額を計算します。控除額の上限は、支払保険料の合計額に関わらず、50,000円です。(旧制度の長期損害保険契約に関する経過措置がある場合は計算が異なります。)
複数の契約がある場合でも、それぞれの保険会社から送付される控除証明書をすべて集めて、支払保険料を正確に把握することが重要です。
まとめ
生命保険料控除と地震保険料控除は、フリーランスの方々も確定申告を通じて所得税の負担を軽減できる可能性のある重要な控除です。これらの控除を適用するためには、ご自身の保険契約が控除の対象となるかを確認し、保険会社から送付される控除証明書を基に、確定申告書へ正しく記載・添付することが必要です。
2024年の確定申告期間に向けて、早めに必要な控除証明書を確認し、準備を進めておくことをお勧めします。ご自身の状況に応じて、これらの控除を適切に申告し、税額計算に役立ててください。税制に関する不明な点がある場合は、国税庁のウェブサイトを参照したり、税務署や税理士に相談したりすることも検討してください。