【2024年改正】少額減価償却資産の特例延長!フリーランスの経費計上Q&A
2024年の税制改正では、個人事業主やフリーランスの税金計算に影響を与える様々な変更点があります。特に、事業活動に不可欠なパソコンやソフトウェア、その他設備への投資に関する経費計上方法は、日々の記帳や確定申告に直結するため、正確に理解しておくことが重要です。
この記事では、フリーランスの皆様が事業のために取得した少額な資産について、経費計上を有利に進めることができる「少額減価償却資産の特例」に焦点を当て、2024年税制改正による変更点や、具体的な適用方法・注意点などをQ&A形式で解説します。この特例をうまく活用することで、適切な時期に経費を計上し、確定申告の手間を軽減することにつながります。
Q1:少額減価償却資産の特例とはどのような制度ですか?
A1: この特例は、通常は数年間にわたって少しずつ経費(減価償却費)として計上する減価償却資産のうち、比較的小額なものについて、一定の要件を満たせば取得した年に一度に全額を経費として計上できる制度です。
本来、事業のために使用する資産(減価償却資産)は、その使用可能期間に応じて費用を配分する「減価償却」という手続きを行います。例えば、法定耐用年数が4年のパソコンを20万円で購入した場合、通常は4年間にわたって毎年5万円ずつ経費計上することになります。しかし、この特例を適用すると、青色申告を行っているなどの要件を満たせば、20万円全額を取得した年の経費とすることができるのです。これにより、取得した年の所得を圧縮し、税負担を軽減する効果が期待できます。
Q2:2024年の税制改正で、この特例はどのように変更されましたか?
A2: 少額減価償却資産の特例自体は以前から存在しますが、2024年の税制改正により、その適用期限が2年間延長されました。
具体的には、この特例の適用対象となる資産の取得期間が、従来の「2024年3月31日まで」から「2026年3月31日まで」に延長されました。これにより、2024年4月1日以降に取得した対象資産についても、引き続きこの特例を活用して取得価額の全額を一括で経費計上することが可能になりました。これは、フリーランスが事業の継続や拡大のために行う設備投資を後押しするための措置と言えます。
Q3:この特例をフリーランスが利用すると、どのようなメリットがありますか?
A3: 主なメリットは以下の2点です。
- 節税効果: 取得した年に資産の取得価額全額を必要経費として計上できるため、その年の所得金額が減少し、所得税や住民税の負担を軽減することができます。特に、大きな設備投資を行った年に利用すると、その年の税負担を大きく抑える効果が見込めます。
- 経費計算の簡略化: 通常の減価償却では、資産ごとに毎年の償却費を計算し、固定資産台帳などで管理する必要があります。この特例を適用すれば、取得した年に全額を経費として計上するため、その後の減価償却計算や管理が不要となり、経理事務の負担を軽減できます。
Q4:特例を適用するための条件や手続きはありますか?
A4: 少額減価償却資産の特例を適用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
- 対象者: 青色申告書を提出する中小企業者等であること。フリーランスの場合、青色申告の承認を受けている方が対象となります。
- 対象資産: 取得価額が10万円以上30万円未満の減価償却資産であること。10万円未満の資産は、この特例とは別に、原則として取得した年に全額を経費計上できます(消耗品費などとして)。
- 適用期間: 2008年4月1日から2026年3月31日までの期間に取得したものであること(2024年改正による延長後の期間)。
- 適用限度額: 特例を適用できる年間の取得価額の合計額には上限があり、年間300万円までです。この300万円には、消費税込みの価額または税抜きの価額のいずれかの処理方法を選択して適用することになります。
- 手続き: 確定申告書に、この特例の適用を受ける旨を記載するとともに、「少額減価償却資産に関する明細書」などの添付が求められます。また、帳簿上は、取得した資産を固定資産として計上した上で、摘要欄などに特例適用資産であることを記載し、全額を減価償却費として計上するなどの処理が必要になります。
Q5:パソコンやソフトウェアなど、フリーランスがよく購入する資産も対象になりますか?
A5: はい、フリーランスが事業のために取得するパソコン、タブレット、外部ディスプレイ、ソフトウェア、カメラ、高性能な事務机や椅子、プリンター、特定の測定機器など、事業のために使用されるもので取得価額が10万円以上30万円未満であれば、多くの場合、この特例の対象となり得ます。
ただし、土地や建物、構築物など、減価償却資産の対象とならないものや、美術品、骨とう品などで時の経過により価値が減少しないものは対象外です。また、事業用として使用していることが前提となりますので、プライベートでも使用する資産については、事業専用割合(家事按分)を計算し、事業用の部分の金額が10万円以上30万円未満である場合に、その事業用部分について特例を適用することを検討することになります。
Q6:特例を利用する際の注意点はありますか?
A6: いくつかの注意点があります。
- 年間300万円の限度額: 年間の取得価額の合計が300万円を超える場合、300万円を超える部分についてはこの特例を適用できません。通常の減価償却を行うか、10万円以上20万円未満であれば一括償却資産として3年で均等償却する方法などを検討する必要があります。複数の資産を取得した場合、合計額に注意が必要です。
- 青色申告者であること: 繰り返しになりますが、この特例は青色申告を行っている個人事業主が対象です。白色申告の方はこの特例を利用できません。
- 家事按分: 事業とプライベートの両方で使用する資産(例:自宅兼事務所の家賃や電気代、事業にも使用する自動車など)と同様に、特例対象となる資産についても、事業で使用する割合(家事按分)を計算し、事業用の割合に応じた部分のみを経費として計上することになります。特例の適用判定も、家事按分後の事業用部分の金額で行います。
- 適用は任意: この特例の適用は任意です。事業の状況によっては、あえて通常の減価償却を選択した方が、毎年の所得を平準化できて有利な場合もあります。例えば、取得した年の所得が低い場合などです。ご自身の事業計画や所得状況に合わせて慎重に判断することをお勧めします。
Q7:この特例を適用した場合、確定申告書にはどのように記載しますか?
A7: 確定申告書Bの「所得金額に関する事項」の中の「事業所得」や「不動産所得」などの欄で、必要経費として「減価償却費」の項目に計上します。
具体的には、青色申告決算書の「減価償却費の計算」の欄に、特例を適用した資産の取得価額や適用額などを記載します。多くの会計ソフトでは、少額減価償却資産として登録することで、自動的にこの欄に反映されるようになっています。最終的な確定申告書Bの「所得金額」には、この減価償却費を含めた必要経費が計算された後の事業所得等の金額が記載されます。申告書への記載方法の詳細については、国税庁の確定申告書作成コーナーや、ご利用の会計ソフトのマニュアルをご確認いただくか、税理士にご相談いただくのが確実です。
まとめ
2024年税制改正により少額減価償却資産の特例の適用期限が2年間延長されたことは、フリーランスの設備投資計画や経費計上において重要な情報です。取得価額が10万円以上30万円未満の資産について、青色申告を行っている方は、この特例を活用することで、取得した年の税負担を軽減し、経理事務を効率化できる可能性があります。
ただし、適用には年間300万円の限度額や家事按分などの注意点もあります。ご自身の事業状況や所得計画を踏まえ、この特例を最大限に活用できるよう、正確な情報に基づいた経費計上を心がけましょう。確定申告書の作成にあたっては、最新の申告様式や記載要領をご確認いただくことをお勧めいたします。