2024年税制改正で変わる?少額減価償却資産の特例をフリーランスが知るべきQ&A
2024年の税制改正は、所得税に関するさまざまな変更を含んでいます。特にフリーランスの皆様にとって、確定申告に直接影響する可能性のある改正内容は正確に把握しておくことが重要です。この記事では、フリーランスの確定申告で多くの方が関心を持つであろう「少額減価償却資産の特例」に焦点を当て、2024年の改正内容やその取り扱いについて、Q&A形式で分かりやすく解説します。
なぜ少額減価償却資産の特例がフリーランスにとって重要なのでしょうか?
事業で使用するパソコン、カメラ、ソフトウェア、机、椅子など、一定の金額を超える資産は「減価償却資産」となり、その購入費用を一度に全額経費にすることはできません。これらの資産の価値が時の経過とともに減少するという考え方に基づき、決められた年数(耐用年数)にわたって少しずつ経費として計上していく必要があります。これが減価償却です。
しかし、この手続きは手間がかかる場合があり、また、高額な設備投資を行った年にまとめて経費にできないため、納税額の負担感を減らしにくいという側面もあります。「少額減価償却資産の特例」は、一定の条件を満たすことで、本来なら減価償却すべき資産の取得価額を、取得した年の経費にまとめて計上することを認める制度です。これにより、フリーランスの方々が比較的高価な設備投資を行った際の経費処理を簡略化し、節税にもつながる可能性があるため、重要な制度と言えます。
Q&Aでわかる2024年税制改正と少額減価償却資産の特例
ここでは、2024年の税制改正に関連して、少額減価償却資産の特例についてフリーランスの方が疑問に思いそうな点をQ&A形式でご紹介します。
Q1: 少額減価償却資産の特例とは、具体的にどのような制度ですか?
A1: この特例は、「中小企業者等が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除」などとともに、青色申告を行う中小企業者等が利用できる制度です。簡単に言うと、通常であれば減価償却が必要な資産(取得価額が10万円以上)であっても、取得価額が30万円未満の場合には、一定の要件のもと、取得した年の事業所得等の金額の計算上、その取得価額の全額を一括で必要経費に算入できるというものです。年間合計300万円までという上限が設けられています。この特例を適用するかどうかは任意で選択できます。
Q2: 2024年の税制改正で、この少額減価償却資産の特例はどのように変わりますか?
A2: 少額減価償却資産の特例自体は、2024年の税制改正において、適用期限が2年間延長されました。これにより、令和6年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得し、事業のように供した資産についても、引き続きこの特例を適用できるようになります。特例の主な内容(対象資産、取得価額の上限30万円未満、年間合計300万円の上限など)に変更はありません。制度そのものが廃止されたり、金額の上限が変更されたりするわけではありませんのでご安心ください。
Q3: この特例の対象となる資産には、フリーランスの場合、どのようなものがありますか?
A3: この特例の対象となるのは、「減価償却資産」のうち、取得価額が30万円未満のもので、事業の用に供したもの(実際に事業で使い始めたもの)です。フリーランスの方が事業で使用するために購入する一般的なものとしては、以下のようなものが考えられます。
- パソコン、タブレット、スマートフォン: 業務に必要な高性能なものも、30万円未満であれば対象となります。
- カメラ、レンズ: 写真家や動画編集者など、業務で使用する場合です。
- デザインソフト、動画編集ソフトなどのソフトウェア: 買い切り型のもので、取得価額が30万円未満の場合です。
- プリンター、スキャナーなどの周辺機器:
- 作業用デスク、椅子、本棚:
- 工具や機材: 業種によります。
ただし、土地や建物、構築物など、減価償却資産ではないものは対象外です。また、美術品や骨董品なども、一定の条件を満たさない限り対象にはなりません。あくまで「事業のために使用される、時間の経過とともに価値が減少する資産」が対象となります。
Q4: 特例を適用するための条件や手続きはありますか?
A4: 主な適用条件は以下の通りです。
- 青色申告者であること: 白色申告ではこの特例は適用できません。
- 中小企業者等であること: 常時使用する従業員の数が1,000人以下である等の要件を満たす必要がありますが、多くのフリーランス個人事業主はこの要件に該当すると考えられます。
- 取得価額が30万円未満の減価償却資産であること: 1単位ごとの取得価額で判定します。
- 取得し、事業の用に供していること: 購入しただけでなく、実際に事業で使用を開始している必要があります。
- 年間の合計額が300万円までであること: その年の事業供用開始した資産の取得価額の合計が300万円を超える場合は、300万円が限度となります。
手続きとしては、確定申告書にこの特例を適用する旨を記載し、必要な明細書(「少額減価償却資産に関する明細書」など)を添付して提出することになります。具体的に確定申告書のどの欄にどのように記載するかは、国税庁の確定申告書作成コーナーや手引きで確認できます。
Q5: 特例を適用しない場合と比べて、確定申告でどのような違いが出ますか?
A5: 少額減価償却資産の特例を適用しない場合、取得価額10万円以上の資産は原則として耐用年数に応じて減価償却を行うか、または「一括償却資産」(10万円以上20万円未満の資産を3年間で均等に償却)として処理することになります。
- 特例適用: 取得した年に取得価額の全額を必要経費に算入。その年の所得を大きく減らせる可能性があります。
- 減価償却: 複数年にわたって少しずつ経費に算入。毎年の経費計上額は少なくなる傾向があります。
- 一括償却資産: 3年間で均等に経費に算入。特例ほど一度に多くの経費にはなりませんが、3年間で必ず償却できます。
特例を適用することで、特に高価な設備投資を行った年の課税所得を減らし、納税額を抑える効果が期待できます。しかし、翌年以降の経費は減るため、複数年での税負担の平準化という観点では、減価償却を選択する方が有利な場合もあり得ます。ご自身の事業計画や所得状況に合わせて検討することが重要です。
Q6: 2024年中に購入した資産に、今回の2024年の改正内容は適用されますか?
A6: はい、適用されます。今回の改正で特例の適用期限が延長されたのは、令和6年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得し、事業のように供した資産が対象です。したがって、2024年(令和6年)中に取得し、事業に使用を開始した取得価額30万円未満の資産であれば、この特例の適用対象となります。
Q7: 少額減価償却資産の特例を適用する上で、特に注意すべき点はありますか?
A7: いくつかの注意点があります。
- 青色申告であること: 繰り返しになりますが、青色申告者である必要があります。
- 年間合計300万円の上限: この上限を超えた分は特例の対象となりません。計画的に資産購入を行うことが大切です。
- 事業の用に供した日: 特例を適用できるのは、その資産を実際に事業で使い始めた年です。購入しただけでは経費にできません。
- 消費税の経理処理: 消費税について税込経理方式を採用している場合は、税込の取得価額で30万円未満かどうかを判定します。税抜経理方式の場合は、税抜きの取得価額で判定します。どちらの方式を採用しているかによって判定額が変わるため、ご自身の方式を確認してください。
- リース取引: 原則として、所有権移転外リース取引やオペレーティング・リース取引による資産は、この特例の対象外となります。
これらの点に注意して、適用要件を満たしているか、またご自身の状況にとって有利な選択肢であるかを慎重にご判断ください。
まとめ
2024年の税制改正により、少額減価償却資産の特例の適用期限が2年間延長され、令和8年3月31日までとなりました。これは、フリーランスの方々が事業に必要な設備投資を行いやすくするための重要な制度が継続されることを意味します。
取得価額30万円未満の資産について、要件を満たせば取得した年に全額経費にできるこの特例は、確定申告における経費計上を簡略化し、税負担を軽減する可能性があります。しかし、適用には青色申告であること、年間合計300万円の上限があることなど、いくつかの条件があります。
確定申告を行う際は、ご自身が購入した資産が特例の対象となるか、また特例を適用することがご自身の所得状況にとって最も有利な選択であるかを慎重に検討することをおすすめします。正確な情報は国税庁のウェブサイトや確定申告の手引きでご確認いただき、必要に応じて税理士等の専門家にご相談ください。